アポロ計画とは
1960年代はじめ、NASAは月面への有人探査計画を着想します。その内容は、3人の宇宙飛行士を乗せて月を周回したのち、月に着陸するというもの。アメリカがソ連の人工衛星「スプートニク」打ち上げ成功に衝撃を受け、NASA(アメリカ航空宇宙局=National Aeronautics and Space Administration)を立ち上げたのが1958年。それからわずか2年後のことでした。
当時はアメリカとソ連による宇宙開発競争が過熱していたものの、ようやく有人宇宙船が地球周回(衛星)軌道に乗ったところであり、画期的な計画とされました。
計画名の由来と名付け親
アポロ計画の名付け親は、当時のNASAのエイブ・シルバーシュタイン博士(1908年〜2001年)です。
なお、アポロはギリシャ神話の中で、ゼウスの息子として生まれます。双子の妹にアルテミスがいます。アポロは、輝くほどに美しかったと言われており、毎朝東の宮殿で目覚めると、金色に輝く太陽の馬車に乗って天を駆けて西の地平に降り立つことから「日の神」とよばれました。
なぜ「ミッション・アポロ」が計画されたのか
第二世界大戦を終え、いわゆる冷戦時代に突入していた当時の世界情勢が背景にあります。東西の両陣営はそれぞれ、NATO(北大西洋条約機構、いわゆる西側諸国)とWT(ワルシャワ条約機構、いわゆる東側諸国)とに分断されていました。それぞれを代表するアメリカとソ連は、軍事技術開発の延長として宇宙開発競争においてしのぎを削っていました。
ソ連がスプートニクで世界初の人工衛星打ち上げに成功し、遅れをとった恰好のアメリカは、マーキュリー計画での有人・地球周回軌道到達を目指し挽回をめざしました。しかし、ソ連はユーリ・ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行を成功させます。アメリカは終始劣勢に立たされていました。
アメリカの逆転を可能とする道は、月への有人飛行に絞られました。ただ、アポロ計画についてはその予算規模からも事業規模からも、いかにアメリカといえど容易に実行できるものではなく、当時のケネディ大統領もはじめは二の足を踏んでいました。しかし、度重なるソ連の躍進に、本格的にアポロ計画に取り組むことを決意します。
失敗?成功?アポロ計画の全体像
- アポロ1号:【有人-失敗】1967年1月。演習中の火災事故により3名の宇宙飛行士(ガス・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィー)が死亡
- アポロ2号:(欠番)
- アポロ3号:(欠番)
- アポロ4号:【無人-成功】司令船の地球周回と大気圏再突入に成功。
- アポロ5号:【無人-成功】月着陸船の地球周回に成功。大気圏再突入後に消息絶つ。
- アポロ7号:【有人-成功】11日間にわたり地球を周回。
- アポロ8号:【有人-成功】初の月周回に成功
- アポロ9号:【有人-成功】10日間にわたり地球を周回。船外活動も実施。
- アポロ10号:【有人-成功】2度目の月周回に成功
- アポロ11号:【有人-成功】初の月面着陸に成功。
- アポロ12号:【有人-成功】2度目の月面着陸に成功。
- アポロ13号:【有人-失敗】機械船の酸素タンクが爆発し、月を周回して地球に帰還。
- アポロ14号:【有人-成功】3度目の月面着陸に成功。初のカラー写真撮影を行う。
- アポロ15号:【有人-成功】4度目の月面着陸に成功。3日間月面滞在し月面車を初めて使用。
- アポロ16号:【有人-成功】5度目の月面着陸に成功。はじめて高地(デカルト高地)に着陸。
- アポロ17号:【有人-成功】6度目の月面着陸に成功。最後の「アポロ」となる。
アポロ11号に関する都市伝説
アポロ11号には、ふたつの陰謀説があります。一つは捏造説(Moon Hoax)、もう一つが遭遇隠蔽説です。
陰謀説
アポロ11号をはじめとするアポロ計画には「本当は月になど、行っていないのではないか--」という捏造説があります。その疑惑の根拠はどのようなものなのでしょうか。以下では、代表的な疑惑の根拠について、反論とともに整理してみたいと思います。
月面の写真に星が写っていないのはなぜか。
(月面の写真には、宇宙空間が写っていますが、その中には空に瞬くはずの星が見えません。そのことを疑問視するものです。)
地球にいる場合、昼間は星が見えません。これは明るすぎる太陽光が星の光に勝ってしまうためです。月面の写真に星が写らないのもこれと同じ現象です。特に写真の場合は、太陽光のあたる宇宙飛行士や月面に焦点が合わせられるため、宇宙空間の微細な星空の光を移すことはできません。
月には大気や風がないのに、国旗がはためいたのはなぜか。
(月の引力は地球の6分の1と言われています。このため月には大気がありません。にも関わらず宇宙飛行士たちが立てたアメリカ国旗ははためいています。これは何故なのか。)
風がなければ旗ははためかない、と思われがちですが、真空状態でも旗ははためきます。また、NASAの用意した旗の構造としても「はためいて見えるように」設計がされていました。
月面の写真で影の方向が別になっているものがあるのはなぜか。
(物体ごとに影にばらつきがあるのは、別方向から照らす光源が複数あるためではないか、という疑問です。)
月面の凹凸や遠近法などにより、影の長さや方向が地球上での感覚と異なって見えたと考えられます。また、光源が複数ある場合、影は物体ごとにまちまちになるのではなく、一つの物体につき複数の影ができるはずですが、そうしたものはありません。
遭遇隠蔽説
遭遇隠蔽説とは、アポロ11号が月面で地球外文明と遭遇しこれを隠蔽しているとする説です。UFO研究家のジョージ・アダムスキー(1891年~1965年)、日本人ではテレビディレクター・タレントの矢追純一、UFO研究科の今野健一らが主張しています。
遭遇隠蔽説の根拠としては、宇宙飛行士のインタビューから引用しているものがありますが、曲解や強引な解釈も多く客観的な立証には至っていません。しいて言えばエドガー・ミッチェル(アポロ14号の月着陸船操縦士、1930年~2016年)がNASAの隠蔽に言及し議論を呼んでいます。