「ニューウェーブってどんな音楽?」
「代表的なニューウェーブのアーティストを知りたい!」
「ニューウェーブの名盤ってどんなのがあるの?」
ニューウェーブとはロック・ミュージックの種類のひとつであり、ロックの時代を表す言葉でもあります。そんなニューウェーブですが具体的にどんな音楽かご存じでしょうか。
パンク以降に登場したパンクロックの影響を感じられる様々な音楽を総称してニューウェーブと呼ぶので、いまいちよく分からない音楽ジャンルと思っている方も多いと思います。
この記事ではそんなニューウェーブの特徴や代表的なアーティスト、聴いてほしい名盤などを詳しく紹介します。
ニューウェーブとはどんな音楽ジャンルなのか?
ニューウェーブの発祥は?
1970年代半ばに流行したパンクロックが衰退していく中でニューウェーブは誕生し、パンクロックを基盤として様々なジャンルと融合したことで誕生した音楽やアーティスト全般のことを指します。
またニューウェーブは既成概念にとらわれないパンクロックの精神と、ハードロックやプログレッシブロックの真摯に音楽と向き合い追求していく姿勢とを併せ持ったジャンルでもあります。
それぞれのアーティストがパンクロックと様々な音楽との融合を試みたため、一言では言い表すことが難しいジャンルといえます。パンクやその他のロックと比べ、あくまでポップにこだわったサウンド作りがニューウェーブの特徴です。
ニューウェーブの語源とは何か?
パンクロック以降に誕生した数々の音楽はとても斬新で今までに無いものだったため、直訳すると「新しい波」という意味を持つニューウェーブという名前で呼ばれるようになります。
通説では1977年にイギリスの音楽系新聞である「Melody Maker」紙が、最初に「ニューウェーブ」という言葉を使用したと言われています。ニューウェーブの先駆けとされているXTCやスクイーズなどのバンドを紹介する際に使われていたようです。
ニューウェーブ以降も新しい音楽は誕生し続けていますが、1970年代後半から1980年代初めにかけてのロックのムーブメントのみを指してニューウェーブと呼ばれます。
ニューウェーブの特徴
多種多様な音楽性
ニューウェーブは特定の音楽ジャンルを指す言葉ではないので、多種多様な音楽性を持っています。
イギリスのバンドであるポリスは、ジャズやジャマイカのレゲエなどを融合させ独自のスタイルを築きました。アメリカのロックバンドであるブロンディはディスコやラップを取り入れたり、1963年にヒットしたドゥーワップの曲をカヴァーするなど幅広い音楽性を見せています。
トーキング・ヘッズはニューヨーク・パンクの拠点だったライブハウス出身のパンクバンドでした。ボーカルのデヴィッド・バーンがアフリカのリズムであるアフロビートや、複合リズムであるポリリズムなどをバンドに取り入れていき斬新なサウンドを追求しました。
エレクトロニックなサウンド
ニューウェーブの中には、シンセサイザーやリズムマシンのような電子楽器を使用したエレクトロ・ポップやシンセポップと呼ばれるジャンルも含まれています。
シンセサイザーなどの電子楽器は1970年代頃まで、プログレッシブロックなどを演奏していた中流階級以上の一部のミュージシャンしか使用できないとても高価な楽器でした。1980年代に入り比較的安価なシンセサイザーが出回るようになったため、多くのバンドにも使用されるようになっていきます。
またシンセサイザーとともに発展を遂げてきた電子音でリズムを刻むリズムマシンなどの登場も、ニューウェーブのミュージシャンたちに大きな影響を与えました。録音した本物のドラム演奏でさえも、音を加工して電子音のように変化させたほどです。
ニューウェーブに関りのあるジャンル
ポストパンク
ポストパンクはニューウェーブと同じくパンクロックからの流れを継承して、他ジャンルとの融合を試みながら形作られました。そのためしばしばニューウェーブと同一視され、同じ意味合いで使われることも多いジャンルです。
しいて差別化するとしたら、ポストパンクの方はパンクロック以前からのガレージロックの流れを色濃く継承しているため、ニューウェーブと比べるとシンセサイザーなどの電子楽器があまり使用されていません。
代表するバンドとしてはセックス・ピストルズのジョン・ライドンが率いるパブリック・イメージ・リミテッドや、スージー&ザ・バンシーズなどが挙げられます。
ノイズミュージック
一般的に楽器とは見なさないようなものを利用して楽曲を作り上げる音楽ジャンルです。工具などの道具や街中で発生するような環境音、風や波などの自然界の音などありとあらゆる音が使用されます。
現代のノイズミュージックは音楽のデジタル化の進歩により、採取された音をコンピューターで加工したり混ぜ合わせたりすることによって多種多様な音楽性を示しています。しかし奏でられるサウンドの特殊性からか、ノイズミュージックを好んで聞くのは一部のリスナーに限られます。
あまり知られていませんが日本のノイズミュージックには世界中にコアなファンが多く、「ジャパノイズ」と呼ばれ親しまれています。
エレクトロ・ポップ
エレクトロ・ポップとは1970年代後半から1980年代初めにかけて流行したエレクトロニック・ミュージックのことです。シンセサイザーやリズムマシンなどの電子楽器を多用したエレクトロニックなサウンドが特徴です。
並行して使用される言葉で「シンセ・ポップ」というジャンルもあり、こちらはエレクトロ・ポップよりもキャッチ―なメロディーが特徴とされていますが明確な違いは示されていません。日本ではテクノ・ポップとも呼ばれていていますが、ジャンルとしてのテクノとは音楽性は異なっています。
ニューロマンティック
ニューロマンティックはニューウェーブから派生した音楽ジャンルのひとつで、イギリスのナイトクラブ「ブリッツ」で行われていたニューウェーブのクラブイベントが発祥といわれています。
音楽性は様々で、シンセサイザーなどの電子音が中心のエレクトロ・ポップのようなバンドもあれば、生演奏が主体のバンドも多く存在しています。デュラン・デュランやカルチャー・クラブなどもニューロマンティックを代表するバンドです。
メイクや衣装などのファッションも特徴的です。パンク・ファッションの生みの親であるマルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドもニューロマンティックの流れに乗り、イギリスのバンドである「アダム・ジ・アンツ」に代表されるパイレーツ・ルックを生み出しました。
ニューウェーブの代表的なアーティスト
ブロンディ
ブロンディはアメリカのロックバンドです。バンド名の由来にもなったブロンドの髪を持つ女性ヴォーカルのデボラ・ハリーとギタリストのクリス・シュタインを中心として1974年に結成されました。
最初はニューヨークパンク・バンドとしてパンクの聖地「CBGB」などに出演して人気を集めていましたが、のちにディスコやラップを取り入れたりレゲエの曲をカヴァーしたりと音楽性を広げニューウェーブの代表するバンドへと変わっていきました。
ギタリストのクリス・シュタインが自己免疫疾患を患ったことで1982年に解散してしまいますが、その後1997には再結成を実現しています。アルバムは全世界で4000万枚以上を売り上げ、2006年にはロックの殿堂入りも果たしました。
トーキング・ヘッズ
トーキング・ヘッズはアメリカ・ニューヨークのアートスクールに通っていた美術系の学生によって結成されたバンドです。そのせいかデビュー当時からインテリ系パンクバンドと揶揄されていたところがありました。
しかしバンドはアフリカの音楽を取り入れながらファンク色を強めていったことで、ファンを増やし注目を集めていきました。またロキシー・ミュージックのブライアン・イーノやPーファンクのバーニー・ウォレルなど名キーボーディストとのコラボレーションも特徴の一つです。
1991年に解散してしまいましたが、ローリング・ストーンの選ぶ「歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第100位にランクインしました。
デュラン・デュラン
1978年にイギリスで結成されたロックバンドです。ニューロマンティックの火付け役であり、アメリカの音楽専門チャンネル「MTV」ブームの立役者でもあります。1982年には初来日を果たし、東京、大阪、名古屋で5公演を行いました。
1984年にシングル「ザ・リフレックス」を発売し、全英・全米のシングルチャートで初めて第1位に輝きました。他にも数多くのヒット曲を残し、映画の主題歌などに使用されています。
日本でもCMやアニメの主題歌、総合格闘技の入場曲などで耳にしたことがあるのではないでしょうか。2001年のシングル「Last Day On Earth」は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」のテーマ曲に使用されました。
ポリス
ソロ活動でも有名なベース兼ヴォーカルのスティング、プログレッシブロックバンド出身のドラマーであるスチュワート・コープランド、アニマルズのギタリストだったアンディ・サマーズの3人によるスーパーバンドです。1977年にイギリスで結成され1980年代にかけて活躍しました。
ロックにレゲエを融合させた独自のスタイルを開拓し、その音楽性はホワイト・レゲエとも呼ばれています。1983年に発表された5枚目のアルバムである「シンクロニシティー」はアメリカのビルボード・チャートで17週連続1位に輝き、その年の年間チャートでも第1位を獲得しました。
2003年にはロックの殿堂入りを果たし、2007年にデビュー30周年を記念して再結成を実現しています。
カルチャー・クラブ
カルチャークラブはイギリスのロンドンで結成されたバンドで、アメリカのブラック・ミュージックであるソウル・ミュージック、中でもモータウンに影響された楽曲が特徴です。
代表曲は1983年のシングル「カーマは気まぐれ」で、10を超える国々のチャートで第1位に輝きました。日本でもよくテレビなどで流れているので特徴的なサビはご存じの方も多いはずです。ストーリー性のあるミュージック・ビデオも注目を集めました。
バンドメンバーの外見も特徴的で、特にバンドの中心人物であるボーカルのボーイ・ジョージは派手なメイクと奇抜な女装ファッションに身を包んでいます。のちに日本で流行するビジュアル系ロックにも大きな影響を与えました。
ユーリズミックス
ユーリズミックスはアニー・レノックスとデイヴ・スチュワートによるユニットです。もともと二人は同じバンドに所属していて、お互いの音楽的才能を認め合う形で1980年にユーリズミックスを結成しました。
音楽性としては電子音を中心とするエレクトロ・ポップに、アニー・レノックスのソウルフルな歌が融合したスタイルです。
1983年にシングル「スウィート・ドリームス」がアメリカで大ヒットを記録し、全米チャートで第1位を獲得しています。2年後の1985年にはスティーヴィー・ワンダーのハーモニカをフィーチャーした「ゼア・マスト・ビー・アン・エンジェル」が注目を浴びました。
日本のニューウェーブの代表的なアーティスト
ヒカシュー
1977年に井上誠と山下康によって結成されたテクノ・ポップ・バンド。その後、巻上公一、海琳正道、戸辺哲が加わり5人体制で活動を始めます。後述の「プラスチックス」「Pモデル」とともに「テクノ御三家」と呼ばれました。
デビューからしばらくはニューウェーブやテクノ・ポップ・バンドとしてのイメージが強いものの、ジャズやクラシック、民族音楽などを取り込みながら多種多様な音楽性を魅せています。3作目のアルバム以降はテクノ・ポップからは離れ即興を中心とした作風に変化していきます。
バンド名の由来は武満徹の作品である「悲歌」だといわれています。
プラスチックス
プラスチックスはイラストレーターの中西俊夫、グラフィック・デザイナーの立花ハジメ、ファッション・スタイリストの佐藤チカを中心に結成した伝説的テクノ・ポップ・バンドです。
活動初期は仲間内で結成されたアマチュアバンドでしたが、プログレッシブロック・バンドの四人囃子の佐久間正英と作詞家の鳥武実が加入したことで先進的なバンドへと変貌していきます。
のちにはラモーンズやトーキング・ヘッズなど海外の有名バンドとも共演し、3回にわたってワールドツアーを行うほどのバンドへと成長しました。
Pモデル
音楽プロデューサーである平沢進が1979年に結成し、同年にメジャーデビューを果たしたグループが「Pモデル」です。平沢はボーカルとギターを担当し、グループの活動と並行して楽曲制作・提供を行っていました。プロレスラーである長州力の入場テーマ曲も平沢の手によるものです。
前身バンドである「マンドレイク」ではハードロックやヘヴィメタルを演奏していましたが、そのころからバンドとは別の活動としてシンセサイザーを利用した楽曲制作も始めていました。
1988年に平沢がPモデルの「凍結」を宣言し、事実上の活動休止を迎えています。
ニューウェーブの名盤
1978年ー「恋の平行線」ブロンディ
ブロンディの3作目のアルバムとなった作品で、ブロンディの最高傑作とも呼ばれています。このアルバムをきっかけにブロンディは人気バンドの仲間入りを果たしました。
ブロンディはアメリカのバンドですが当時は母国よりイギリスでの人気の方が高く、この「恋の平行線」がヒットしたのもイギリスが先でした。それを受けて逆輸入の形でアメリカでも人気が高まり、シングルカットされた「ハート・オブ・グラス」はチャートを駆け上がり第1位に輝きました。
1979年ー「白いレガッタ」ポリス
1979年に発売されたポリスの2作目のアルバムで、人気が高まりつつあったポリスが初めてチャートで1位を獲得したアルバムでもあります。
アルバムの1曲目に収録されていた「孤独のメッセージ」はシングルカットされ、チャートで1位に輝きました。ローリングストーン誌が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・ギター・ソングス100」の65位にランクインし、グラミー賞最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンスを受賞しました。
1983年ー「カラー・バイ・ナンバーズ」カルチャー・クラブ
代表曲である「カーマは気まぐれ」を含むカルチャー・クラブのもっとも勢いがあった頃のアルバムです。全英で第1位に全米で第2位に輝き、ローリングストーン誌の選ぶ「1980年代のベストアルバム100」で96位にランクインしています。
アルバムの音楽性としてはデキシーランド、ジャズ、ゴスペル、モータウンなど多岐にわたり一見して統一感が無いように見えますが、ヴォーカルであるボーイ・ジョージの歌により見事にまとめられています。
1983年ー「セブン・アンド・ザ・ラグド・タイガー」デュラン・デュラン
デュラン・デュランが発表した3作目のスタジオ・アルバムです。全英チャート第1位に輝き、ニューロマンティックを代表するアルバムでもあります。
1曲目に収録されている「ザ・リフレックス」はファンクバンド「シック」のナイル・ロジャースによるリミックスバージョンがのちにリリースされ、全英・全米のチャートで第1位に輝いています。
ニューウェーブに関するまとめ
ニューウェブについて紹介致しましたがいかがでしたか?
幅広い音楽性やファッション性を持つニューウェーブは、当時のトレンドの最先端を行くまさにポップ・ミュージックの「新しい波」でした。しかしポップさを追求しながらも、その高い音楽性で数々のヒット曲を量産し、ロックの歴史に確かな爪痕を残しました。
もしまだ未体験なら、ぜひニューウェーブのアーティストを聴いてみてください。きっとあなたの好きなサウンドに出合えるはずです!