第四次産業革命
さて、2020年現在ではデジタル技術へと移行した第三次産業革命から更なる革命が起ころうとしています。人工知能など完全な機械中心の世界である第四次産業革命です。
第四次産業革命をわかりやすく解説すると…
第四次産業革命とは、機械の高度な知的活動を中心とした社会にする革命です。時期については諸説ありますが、2010年代から2040年代先を想定しています。
第四次産業革命では、あらゆる物品をインターネットと繋げるIoT(Internet of Things)を普及させ、人工知能を用いたシステムを確立させようとしているのです。人工知能とは、自ら物事を考えて人間の言動や行動を吸収していく人工的に作られた人間の脳のようなものを意味します。
人間と比べて、膨大な量のデータ処理を行うことができるのです。この人工知能を使って製造業を更にデジタル化させる試みがなされています。ルンバをはじめとした掃除ロボットや人間の体温を感知して動くエアコンなどが既に実用化されました。
スマートフォンであるiPhoneに搭載された「Siri」や「Googleアシスタント」などの音声機能にも人工知能が使われています。将来的には、自動運転する自動車や早期治療ができる医療機器なども登場するでしょう。
ドイツではIoTの普及を国家プロジェクトとして行い、「インダストリー4.0」と呼ばれるようになりました。このIoTの普及は日本の総務省でも熱心に行われています。
IoTと人工知能による最先端技術によって、生物と機械を組み合わせる考えも生まれました。遺伝子工学も発達し、人体改造による現在の人類の頭脳よりも優れた「ポストヒューマン」を生み出すことも可能とされています。
第四次産業革命の時代はすでにSF映画の世界へと足を踏み入れているのです。
機械中心の世界へ
第四次産業革命では、人の手だけによって作られた物が少なくなり、機械中心の世界へと移行していきます。
これは、第三次産業革命のように単純作業を機械化するだけではありません。自動車の運転、顧客に合わせた商品作成やサービス提供などの細かい作業も機械が行うようになるのです。
また、インターネットによる共有経済(シェアリングエコノミー)も始まります。インターネット上であらゆるサービスの提供者と利用者を繋ぐシステムによって、自分の資産を他社と共有することが可能になったのです。
例えば、もう着ない洋服や使わないゲーム機などをフリマアプリやメルカリといった個人間売買のサイトがこれに当てはまります。他にも、住まなくなった住居や使わない部屋を宿泊施設として利用できるサービスなどが実用化されました。
そして、現金を持たず人工知能による資産運用も始まっています。コンビニなどでスマートフォンを使った電子決済など、物質的なモノを持ち歩かない社会へと変わっているのです。
他にも、将来的に人工知能を使った介護ロボットや農業生産の管理も実用化されるでしょう。また、遠隔操作による無人飛行物体ドローンに人工知能を搭載して、災害時の救助活動や物資支援に役立てようとしています。
第四次産業革命によって、人が機械に頼る機械中心の世界が形作られているのです。
第四次産業革命の2大要素
1:IoTと人工知能
第四次産業革命の重要な要素として挙げられるのは、IoTと人工知能です。この二つによって、第四次産業革命が起きたともいえます。
IoTというあらゆる物をインターネットに繋ぐことで、私たちの生活はガラリと変わりました。家電は自分の生活スタイルに合わせて自動で動かすことができ、家の防犯やペットの様子観察もインターネットに繋いだカメラでいつでも確認可能です。
また、人間よりも優秀な人工知能が細かい作業まで行ってくれるため、現代の生活はとても豊かです。スマホなどの端末に話しかけるだけで必要な情報を得たり、機械を動かせるようになりました。
機械とモノ、機械と人間の生活を繋げたIoTと人工知能。この二つが第四次産業革命の代名詞ともいえるでしょう。
2:最先端技術
第四次産業革命では最先端技術も重要な要素となります。人工知能をはじめとして、ロボット工学や分子レベルの技術であるナノテクノロジーなどが発展し、工業製品をはじめとして様々なものに利用されるようになりました。
また、最先端技術は工業などのモノだけではなく、生物や遺伝子にまで使われるようになります。人工的な遺伝子組み換え技術が誕生し、植物の遺伝子を操作して薬物や虫に強い品種を開発するようになりました。
そして、人工多様性幹細胞など再生医療の分野に対しても発達します。こうした最先端技術を医学に応用することによって、これまで治療が出来なかった病気に対して有効な治療法が見つかる可能性が大いに期待されているのです。
第四次産業革命の影響
第四次産業革命においては、二つの影響がありました。今までの革命にはない人類の進化や人間の在り方といった倫理的な影響と便利な製品や新しい社会システムなどの物理的な影響です。
新たな人類の進化
第四次産業革命では、あらゆる分野において人が介入せずデジタル化した機械や最先端技術が動くようになりました。最先端技術や機械化の開発は活発に進み、遂には人間の体内にまで機械を取り込むようになります。
遺伝子工学と分子レベルのナノテクノロジーを用いた人体改造です。これによって、「ポストヒューマン」と呼ばれる新たな人類が生まれるといわれています。
ポストヒューマンとは、人間の能力を限界まで強化する人間強化を自然な人類の進化に合わせることで生み出される未来の人類です。他にも、人間と人工知能を組み合わせることでも生み出せると考えられています。
しかし、このポストヒューマンを人間と呼べるかどうかは倫理的な観点からみて難しいものです。現代の私たちから見れば、「機械で出来ているから人間じゃない」と考える人が多いでしょう。
第四次産業革命では、こうした倫理的な部分にまで技術革新が及んでいるのです。
新たな社会システム
第四次産業革命は私たちに新たな社会のシステムをもたらしました。現金を持ち歩かないキャッシュレス社会、ネット上で情報の共有から生活用品の買い物までできるネット社会が代表的なものです。
また、サスティナブル社会といって持続可能な資源を使う社会への取り組みも始まりました。自分の財産を他人と共有するシステムが出来上がり、以前のような大量消費を控えるようになったのです。
要らなくなったものや必要ないものを捨てずに必要な人にあげたり、環境に負荷をかけない素材を原料とした衣類を作ることも可能になりました。
第四次産業革命では、こうした様々な新しい社会システムが確立しているのです。
第四次産業革命の問題点
第四次産業革命では高度な技術が使われるようになりました。しかし、全てが人間や生物にとって良いものではありません。
遺伝子組み換え作物が作られるようになり、除草剤や虫などに強い「生産しやすく売れやすい食品」はできましたが、その安全性は曖昧です。
食後に組み込まれた遺伝子がどう働くか、栄養素が変化したりアレルギーが起きないかなど様々な懸案事項が生まれました。
また、第三次産業革命でも問題点として挙げられた機械への依存が第四次産業革命で更に高まりました。人々は機械を頼った便利な生活に慣れすぎてしまい、人間としての能力が低下する恐れがあります。それに加えて、機械を組み込む新しい人類の進化も人間の在り方として正しいのか疑問です。
あらゆるモノにインターネットを繋げたことで、ネットウイルスに対して社会全体が非常に弱くなってしまったことも問題として挙げられます。また、デジタル化が進むにつれてデジタル技術な得意な人材の不足も問題点です。
社会が便利になると同時に、私たちは人間にとって脅威となるものを作り出しているともいえるでしょう。
産業革命による環境問題
18世紀から始まり現在まで続く産業革命。人間にとって便利で快適な社会をもたらしましたが、地球環境には著しいダメージを与えました。
産業の工業化において動力源となった石炭や石油エネルギーは大量の二酸化炭素を排出することになり、これによって地球温暖化や異常気象などが発生する原因となります。
また、工業化による大気汚染や有害物質の排出によって人体にも被害が出ました。汚染された空気や水は喘息や中毒症状、アトピーやアレルギーの原因となったのです。
日本においても、高度経済成長期である1950年代から70年年代にかけて水質汚染や大気汚染による公害病が問題になりました。大気汚染は周囲の空気を吸うことで、水質汚染は食物連鎖による魚などから体内に入り病気を引き起こしたのです。
産業革命は他にも、オゾン層の破壊や海洋汚染、熱帯雨林や森林の減少、砂漠化の拡大、酸性雨による被害、生物の絶滅など数多くの環境問題の原因となりました。
また、原子力発電の開発によって放射能汚染の問題も起こります。1986年にウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電事故では、原子炉の爆発により人体に有害な放射線物質が大量に放出されました。
これによって放射能汚染が起こり、チェルノブイリ周辺は人が立ち入ることの出来ない汚染区域となってしまいます。産業革命の影響で人々の故郷を奪ってしまったのです。
こうした事実を踏まえて、現在では環境問題に対する活動が熱心に取り組まれています。1992年には国連環境開発会議が開催され、国際的に環境問題に取り組むようになりました。
今後の産業革命とは
今後の産業革命は、環境に優しい工業製品の開発が活発になるといわれています。生物工学とコンピューター技術を組み合わせて、色彩豊かで色褪せない着色技術の開発が進められているのです。
人体にも地球環境にも優しい素材や発明が中心となるため、植物由来の原料が注目されています。これまでの産業革命によって壊してきた地球環境の問題を解決することを目的とした革命が期待されているのでしょう。
産業革命に関するまとめ
いかがでしたでしょうか?18世紀イギリスから始まり、現在、そして未来に向けて続いている産業革命。この記事では、第一次産業革命から第四次産業革命まで詳しく解説しました。
最初は「少し便利に」「生活を少しでも豊かに」といった小さな気持ちから始まったのかもしれません。しかし、産業革命の全体を見ていくと、少しの便利さでは満足出来なくなったことが分かります。
世界恐慌や世界大戦まで引き起こす原因となってしまいましたが、私たちの生活はとても豊かで便利になりました。産業革命には良い面と悪い面があり、今後は悪い面によって起こった問題を解決していくことに技術を使っていきたいですね。