1788年~1790年 – 64歳~66歳「『実践理性批判』と『判断力批判』」
『実践理性批判』
1788年、カントは『実践理性批判』の論文を発表。『純粋理性批判』から続く論文であり、カントの批判哲学を示す「三批判書」という言い方の中で、”第二批判”として位置づけられています。
『判断力批判』
1790年に、いわゆる”第三批判”である『判断力批判』を発表。これによってカントの哲学者としての立場が明確となったと言えるでしょう。
これら三批判書は、現在でもカントの哲学を知るために重要な資料として用いられています。かなり難しい本ではありますが、興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか?
『ベルリン月報』にて数々の論争
この”三批判書”の出版前後、カントは『ベルリン月報』で多くの論争を行い、その繋がりで多くの論文や思想を書き残しています。
『啓蒙とは何か』などの論文は、『ベルリン月報』で行われた論争によって生まれた論文とも目されており、この時期のカントが巻き込まれ、あるいは自ら介入していった論争は、多くの学問分野に有用な気づきを与える結果となりました。
フランス革命とカント
1789年に勃発したフランス革命について、カントは非常に強い関心を持っていたことが記録されています。
カントはロベスピエールらジャコバン派によって過激化していく革命にも、一貫して賛美の姿勢を崩しておらず、おそらくフランス革命の影響を受けたと思われる『理論では正しいかもしれないが実践の役には立たないという俗言について』や『永遠平和のために』などを残しています。
1794年 – 70歳「宗教や神学への講述を禁じられてしまう」
宗教検閲による逆風
1788年にフリードリヒ・ヴィルヘルム2世の法務大臣、ヴェルナーが発布した宗教検閲は、カントに対して強烈な逆風として襲い掛かることとなりました。
1792年に発表した『人間の支配をめぐる善現理と悪原理の戦いについて』という論文が検閲に引っかかって出版禁止となったことを皮切りに、カントの図書は「宗教的に有害である」という指定を受けてしまうことになりました。
これによりカントは1794年、宗教や神学に関わる講義や記述を行う事を禁止されてしまうことになったのです。
1804年 – 79歳「盛大な葬儀で旅立つ」
晩年のカント
晩年のカントは、老齢による心身の衰えに苦しめられながらも、最後まで哲学者として目の前の問題に対する思考を続けていきました。
彼が最後まで思考を続けていたのは、「形而上学的原理から物理学への移行」という自然哲学系の主題だったらしく、その草稿は『オプス・ポストゥムム』として遺されています。
ただしその論文は発表されることはなく、カントは老年性の認知症の進行の中で、1804年の2月、静かにこの世を去ることになりました。
望外の盛大な葬儀
カントの葬儀は2週間男度にわたって盛大に行われましたが、カント自身は簡素な葬儀を望んでいたことが記録されています。彼の人望を示すような盛大な葬儀に、カント自身が何を思ったのかは、当たり前ですが謎のままです。
彼の遺体はケーニヒスベルク大学の墓地に葬られ、現在はロシア領のケーニヒスベルク大聖堂で眠っています。遺体を動かした記録がないため、カントが眠る場所を訪れたい方は、ぜひとも足を運んでみてはいかがでしょうか。
イマヌエル・カントの関連作品
おすすめ書籍・本・漫画
純粋理性批判
おそらくカントの思想を学ぶ上で最も重要な論文を、最も分かりやすく和訳したのはこちらのシリーズだと思います。
ただ、わかりやすさを重視した分、誤訳だと思われる部分もそこそこ散見されるため、本気で学習したい方にはあまり向いていません。あくまで入門書としてカントに触れたい方にお勧めいたします。
実践理性批判
カントの哲学を代表する論文のうち、”第二批判”と称される論文です。上記のシリーズと比べると和約は非常に難解ですが、その分誤訳も少なくなっている印象を受けました。
『純粋理性批判』を理解していても難しい一冊ですので、何度も繰り返し読むことを覚悟の上で挑戦してほしい一冊となっています。
カント入門
カントの生涯を解説した一冊です。哲学や倫理学など、それぞれの分野についての解説は抑えめですが、カントがどういう人でどんな業績を遺したのかが、非常に分かりやすくまとめられています。
「哲学に興味はないけど、カントがどういう人なのか気になる」という方にお勧めしたい一冊となっているだけでなく、彼の業績が何に根差したものなのかを知りたい方にもおすすめの書籍となっています。
【24年11月最新】カントをよく知れるおすすめ本・書籍ランキングTOP7
関連外部リンク
イマヌエル・カントについてのまとめ
世界史上の哲学者の中でも、特に難しいとの呼び声が高いカントという人物の哲学。
筆者も大学時代に、「教授が面白い人だったから」という理由でカント倫理学の講義を受講した半端者ではありますが、その時に教授から言われた「カントは難しいと思うから難しい」「”難しさ”の色眼鏡を外せるかどうかで、カントにハマれるかが決まる」という言葉がいまだに忘れられません。
実際、カントの業績や哲学を完璧に理解できているとはいいがたい部分がありますが、少なくとも入門の中の入門としては読める記事に仕上がったかと思っています。ここからカントに興味を持てるかどうかは皆様の感性によるもの。皆さまがこの記事を凌駕するほどの知識を求めるほど、カントに興味を持っていただければ幸いです。
それでは、この記事にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。この記事が皆様に、多少なりと学びとなっていただければ光栄です。