現代に描かれるラスプーチン
外見もエピソードも非常に濃い人物であるラスプーチンは、現代においては様々な娯楽作品の常連として、多くの人に名前を知られる人物となっています。また、性的なエピソードが多い彼らしく、現在のロシアではストリップ・クラブなどの性風俗店に、ラスプーチンの名を冠した店が非常に多く見られるそうです。
娯楽作品においては、例えば映画では2020年に公開された『キングスマン: ファースト・エージェント』にて、リス・エヴァンス氏が演じたラスプーチンの姿が、最も記憶に新しいラスプーチンであるかと思います。
アニメーションやゲームにおいてもラスプーチンは非常に多くの作品に登場し、特に『Fate/Grand Order』に登場するラスプーチンは、シナリオにおける重要な役割と原作ファンへのサービスを両立する、非情に美味しい役どころとして登場しています。
他にも漫画『ドリフターズ』や、アニメ作品である『Blood+』など、ラスプーチンが登場する作品は枚挙に暇がありません。また、彼の怪奇的なエピソードの解釈が作品ごとに違っているのも、彼が非常に面白い人物であることの証左だと言えるでしょう。
グリゴリー・ラスプーチンのエピソード
その1「祈りによって血友病を治療した?」
ラスプーチンが皇帝一家から強い信頼を受けるようになったのは、「祈りによって血友病を治療した」という信じがたいエピソードによるものだと言われています。
当時のロシア皇太子だったアレクセイは、先天的な血友病の患者として生まれてしまい、そのため少しのケガが命の危険につながるような非常に危険な状態に置かれ、かつ皇室の侍医も手が付けられないような状況にありました。
そして、そんなアレクセイの治療に当たったのが、当時サンクトペテルブルクで信者を増やしていたラスプーチン。宮殿に招かれた彼が祈りを捧げると、その翌日にはアレクセイの症状は治まっていたと記録が残されています。
ただ、現在ではこの”祈祷”について、実はアスピリンの投与による沈痛治療であったという見方が多数派です。とは言え当時の価値観において、ラスプーチンが「奇跡の人」と呼ばれるほどに信頼を受けていたことは事実となっています。
その2「暗殺されても生き残った”不死と悪運の怪人”」
死に際の生命力の強さがクローズアップされがちなラスプーチンですが、何度暗殺されかけても生き延びる悪運の強さも、彼を語る上では欠かせない要素だと言えます。
ラスプーチンの暗殺が初めて実行されたのは、実はその死の約2年前である1914年。故郷に帰郷していたラスプーチンを刺客が短剣で襲ったことが、公的に残る最初のラスプーチンへの暗殺の実行でした。
この時ラスプーチンは腹部を刺される重傷を負っていますが、彼はなんと手近な棒で反撃。しかも腹部を刺されながら約1日を自宅で耐えて過ごし、彼が腹部の治療を受けたのは刺された翌日であったのだと言います。
その後も何度かラスプーチンは暗殺計画を立てられていますが、それらはいずれも計画者の側で実行される前に瓦解して失敗に終わっています。その強靭な生命力だけではない悪運もまた、ラスプーチンの”怪人”らしさを高めるファクターなのかもしれません。
その3「ラスプーチンは聖人か?狂人か?」
生前から非常に評価の分かれる人物だったラスプーチンですが、その評価の分断は実は現代においても続いています。
現代のロシアにおいて、ラスプーチンはロシア正教会のニコライ・グリャノフ氏や一般国民の多数からは「義人である」という評価を受け、好意的なニュアンスで語られることも決して少なくない人物になっているようです。
しかしその一方で、2008年までロシア総主教を務めたアレクシイ2世からは「イヴァン4世、ヨシフ・スターリンとならぶ狂人である」として公然と批判を受けているなど、やはり生前同様に厳しい見方をされる側面も多く見受けられています。
「聖人か狂人か」という二極化した評価に晒され続けているラスプーチンという人物。それは彼自身の奇怪なエピソードに根差すものでもありますが、だからこそ彼に纏わりつく神秘性をより高める結果にもつながっているようです。
皇室の皇は日本の皇室だけです。よその国には使わないです。