シェイクスピアの名言20選!発言に込められた意図や背景も解説

運命は私たちの手の中にある

1623年発刊の「ジュリアス・シーザー」

It is not in the stars to hold our destiny but in ourselves.

歴史劇として知られる「ジュリアス・シーザー(The Tragedy of Julius Caesar)」の名言で、「運命は星が決めるのではない。我々の思いが決めるものだ」という意味です。シェイクスピアは、運命は個人の思いで変えられるというメッセージを様々な物語で訴えています。これもその一つですね。

ただこの名言、実は原文ではありません。「ジュリアス・シーザー」の物語内ではこう書かれています。

Men at some time are masters of their fates: The fault, dear Brutus, is not in our stars, But in ourselves, that we are underlings.

「人には時として運命の主人となる時がある。ブルータス、私たちが下役になった責任は、私たちの運命にあるわけではなく、私たち自身にあるのだ。」という意味です。シーザー暗殺を目論むキャシアスが、義兄で民衆にも慕われているブルータスを味方に引き入れようとする場面でのセリフです。

運命は自分で切り開くもの!というキャシアスの熱い言葉に、ブルータスは引きずられてしまったわけですね。ブルータスは悪い方向に自らの運命を向けてしまうのですが、私たちは良い方向へ運命を変えられるように行動しましょう。

人殺しに建前もない

ヴィンチェンツォ・カムッチーニ作「カエサルの死」

Let us be sacrificers, but not butchers.

「我々は生贄を捧げるものであり、屠殺者であってはならない」という意味で、「ジュリアス・シーザー」の一節です。シーザー暗殺の意義を話すブルータスの言葉で、理想主義者ブルータスは大義のためにシーザーを殺めるのだと言います。自らの行いを正当化しようとしているのです。

理想を掲げることは大事ですが、現実も見なければいけません。このセリフは、美しいレトリックでつい納得してしまいそうになりますが、現実に暗殺はどんなものであれ人殺しであり、正しいことではありません。

ブルータスは最後に自刃しますが、どんな理想の元であっても暗殺を行うということは、その代償も覚悟しなければならないと、シェイクスピアは教えてくれている気がします。

Et tu, Brute?

「ブルータス、お前もか?」という有名なフレーズもありますが、これはブルータスに殺される直前のシーザーのセリフです。シーザーにとっては、ブルータスの暗殺の建前など何も関係がなく、友情で結ばれていたと思っていたブルータスに裏切られたという思いで発した言葉でした。ブルータス自身が蒔いた種とはいえ、悲劇としか言いようがありません。

どんな事実も解釈次第

「夏の夜の夢」の表紙

men might also construe things after their fashion, Clean from the motive of the things themselves.

これも「ジュリアス・シーザー」の一節です。「人間はとかく自分本位に物事を解釈し、本来の意味とはまるで違ったものになることも珍しくない」という意味です。又聞きだと話が変わってしまう経験は誰にもありますよね。これは政治的な内容ですが、恋愛について述べたセリフでも同様のものがあります。

Love takes the meaning in love’s conference.

「夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)」の一節で、「恋人同士というのは、お互いの話を良いように解釈するものだ」という意味です。このセリフは、愛の言葉の意味は愛情で補うもの、つまり私たちは男女の一線を越えるべきだと暗に伝えています。

趣旨は同じでも、「ジュリアス・シーザー」のセリフとは一転、口説き文句になるあたりがシェイクスピアの凄いところです。

恋人と狂人は幻想のかたまり

「夏の夜の夢」の版画

Lovers and madmen have such seething brains. Such shaping fantasies, that apprehend More than cool reason ever comprehends.

「恋をしている人間と狂っている人間には、理性は通じない。だから彼らを理性で理解しようとしても無駄だ」という意味です。この一説も「夏の夜の夢」に出てきます。喜劇として知られる「夏の夜の夢」は、若者たちの結婚をめぐる恋の話なので、こうした恋愛にまつわる名言がたくさんあります。

物語の中ではさらに続けて、冷静な理性では理解できない存在として詩人(poet)も挙げられています。詩人とは芸術家のことです。つまりこの物語を書いているシェイクスピア自身も、想像力で出来ている恋人たちや狂人と同じだと書いているのです。恋をしている人を理性がないと貶めるのではなく、自分も同じというあたりもシェイクスピアの魅力ですね。

逆境こそ人を豊かにする

「お気に召すまま(As You Like It)」の第1頁

Sweet are the uses of adversity, Which, like the toad, ugly and venomous, Wears yet a precious jewel in his head.

「お気に召すまま(As You Like It)」という喜劇の一節です。「逆境が人に与えるものこそ美しい。それはガマガエルに似て醜く、毒を含んでいるが、その頭の中には宝石を抱えているのだ」という意味です。年老いた公爵が、宮廷にいるよりも森に住む方が危険が少なく、自然の声に耳を傾けることができて良いと話す場面です。

逆境の中で絶望するのではなく、逆境にいるからこそ見えるもの、感じられるものを享受し、自らの人間性を豊かにしようとするこの前向きな姿勢は、ぜひ学びたいものです。

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