ジャック・ザ・リッパーとは、1888年にロンドンで起こった連続猟奇殺人事件と、その犯人のことを示す通称です。現代でも犯人像は全くつかめておらず、世界史上でも名高い未解決事件として有名なため、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
主に売春婦を狙い、殺害した人物の体を解体して臓器を持ち去るという異常で猟奇的な手口や、新聞に犯行声明を送りつけるという異例づくめの犯行スタイルから、この事件こそがいわゆる”劇場型犯罪”の元祖であるとも噂されています。
しかし一方で、「ジャック・ザ・リッパーって結局誰なの?」という疑問も至る所で見られ、正確な実像については浸透していないのが現状です。
ということでこの記事では、ジャック・ザ・リッパーと呼称される事件や、その犯人とされる人物などについて解説していきたいと思います。
この記事を書いた人
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フリーライター、mizuumi(ミズウミ)。大学にて日本史や世界史を中心に、哲学史や法史など幅広い分野の歴史を4年間学ぶ。卒業後は図書館での勤務経験を経てフリーライターへ。独学期間も含めると歴史を学んだ期間は20年にも及ぶ。現在はシナリオライターとしても活動し、歴史を扱うゲームの監修などにも従事。
ジャック・ザ・リッパーとはどんな人物か
名前 | 不明 |
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通称 | ジャック・ザ・リッパー (切り裂きジャック) |
誕生日 | 不明(1800年代) |
※その他全ての情報が未だに不明 |
ジャック・ザ・リッパー事件のハイライト
ジャック・ザ・リッパー事件が始まったのは、1888年の8月31日とされています。被害者はメアリー・アン・ニコルズという42歳の女性でした。彼女は腹と喉を切り裂かれており、特に喉の傷は左右に二回、深くまで切り裂かれていたと記録されています。
そして次の事件が発生したのは9月8日。47歳のアニー・チャップマンが殺害され、子宮と膀胱が持ち去られた状態で遺棄される事件が発生します。同時期のロンドンでは”ホワイトチャペル殺人事件”と呼ばれる連続殺人事件が起こっており、ロンドンはにわかに殺人鬼の恐怖に包まれることになりました。
そして9月30日には、エリザベス・ストライドとキャサリン・エドウッズの2名が遺体として発見。そのうちエリザベスの方は、発見の数分前に殺害され、犯人と思しき人物が目撃されていたことがわかっています。
そしてジャック・ザ・リッパーの犯行が確実視される最後の事件が11月9日に勃発。被害者であるメアリー・ジェーン・ケリーは、全身のあらゆる場所を内臓含めてバラバラに切り刻まれるという凄惨な姿で発見されました。
そしてそれ以降、ジャック・ザ・リッパーのものと確実視される犯行は起こっておらず、同一犯説があるホワイトチャペル殺人事件も、1891年の2月を最後に犯行が起こらなくなりました。
こうして、犯行の動機も犯人の性別すらも不明なまま、ジャック・ザ・リッパーと名付けられた事件は未解決事件となったのです。
劇場型犯罪者の元祖である存在
予告状や脅迫文などを用い、物語の一部として聴衆を巻き込む形の犯罪を「劇場型犯罪」と呼びますが、ジャック・ザ・リッパー事件は、その元祖であると言われています。
エリザベス・ストライドとキャサリン・エドウッズが殺害される数日前、セントラル・ニューズ・エイジェンシーという新聞社に、ジャック・ザ・リッパーを名乗る署名付きの手紙が届けられていました。手紙には主に「売春婦を毛嫌いしている」ということと「犯行はまだ続く」という事が記されており、二人の殺害事件後の10月1日にも同様の手紙が同社に届けられています。
また、10月16日にはホワイト・チャペル自警団の代表に、ジャック・ザ・リッパーからの小包が届けられています。内容は「地獄より」という書き出しで始まる犯行声明文と、アルコール保存された人間の女性の腎臓であったと確認されており、ジャック・ザ・リッパーの異常性の裏付けとして現在も語り継がれる事件となっています。
ジャック・ザ・リッパーは実在するのか
「ジャック・ザ・リッパーは実在するのか」という問いに答えるためには、”ジャック・ザ・リッパー”という言葉の持つ意味を明確化しなくてはなりません。
まず、「ジャック・ザ・リッパーという”事件”」については、これは間違いなく実在した事件であると言えます。同時期に起こったホワイトチャペル殺人事件と同一化される部分もありますが、1888年にロンドンを騒がせた猟奇殺人事件として、ジャック・ザ・リッパーは間違いなく記録に残る事件です。
しかし一方で「ジャック・ザ・リッパーという”殺人鬼”」については、実在していたことは確かですが、犯人の名前や経歴などは全く明らかになっていません。当時の捜査で辛うじてわかっているのは「人体に関する高度な知識を持っている」というだけで、プロフィールに関する情報は何一つとしてわかっていないというのが現状になっています。
そもそも通称として用いられる「ジャック」という名前も、日本で言うところの「名無しの権兵衛」のようなものでしかないため、実際に事件を起こした人物がジャックという名前だったわけではありません。