全く確定していない犯人像
ジャック・ザ・リッパー事件におけるもっとも奇妙な点は、犯人とされる人物の素性が全く確定しないという点でしょう。
犯人として候補に挙げられた人物は複数名存在していますが、そのほとんどが共通点のない人物であり、年齢層や社会的な身分、更に人種や性別すらもまったく確定させることができません。
「遺体を解体して臓器を持ち去った」という点から、職業としては医学関係者や精肉業者が怪しまれることが多く、「犯人の素性が確定しなさすぎる」という点から四方や王室関係者なども疑われていますが、ここも現代に至るまで、全く確定していないのが現状となっています。
唐突な犯行の終わり
ジャック・ザ・リッパーの仕業と確実視される犯行は、1888年11月9日のメアリー・ジェーン・ケリーの殺害を最後に途切れています。
ホワイトチャペル殺人事件の犯人をジャック・ザ・リッパーだと仮定した場合も、1891年の2月を最後に犯行が途絶えており、ジャック・ザ・リッパーという殺人事件は最長でも2年半ほどの期間で終わりを迎えたことになります。
ホワイトチャペル殺人事件においては、ジェームズ・サドラーという男性がジャック・ザ・リッパーの疑いを掛けられて逮捕されていますが、彼も証拠不足で釈放され、結局有力な証拠などは出てくることなく、ジャック・ザ・リッパー事件は現在も未解決のままになっています。
現代に描かれるジャック・ザ・リッパー
ロンドンという大都市を騒がせ、最後まで痕跡すら掴ませることなく消えたジャック・ザ・リッパーは、現代でも多くの創作に登場しています。
そのキャラクター性は非常に様々で、理由のない凶悪な猟奇殺人者であることもあれば、何かしらの理想に燃えた人物。あるいはこの世の存在ではない悪魔や死神、当時のロンドンで社会問題となっていた堕胎された子供の霊の集合体など、様々なキャラ付けで描かれています。
また、事件としても様々な描かれ方が成されており、フィクションの登場人物が多分に関わった事件として描かれることもあれば、舞台設定として「ジャック・ザ・リッパーが徘徊するロンドン」という設定が用いられることも多く、これもまた千差万別な描かれ方だと言えるでしょう。
”未解決事件”として名高いジャック・ザ・リッパー事件は、ある意味で現代における様々な創作の題材として親しまれているのかもしれません。
ジャック・ザ・リッパーの主な被害者
メアリー・アン・ニコルズ
ジャック・ザ・リッパーの犯行が確実視される事件の、最初の被害者です。享年は42歳であり、貧しい生活を送る売春婦の女性でした。
喉を切られて殺害され、死後に腹を切り刻まれるという凄惨な殺害方法を取られ、歯が抜かれていたり舌に切れ込みが入れられていたりと、ジャック・ザ・リッパーの異常性を知らしめる被害者として、現在も比較的詳細な記録が残っています。
アニー・チャップマン
ジャック・ザ・リッパーによる殺人の、二人目の犠牲者とされる女性です。酒乱の傾向こそあったようですが、酒が絡まないときは親切な女性だったという証言が残されています。
彼女の遺体からは子宮と膀胱が持ち去られており、その凄惨な犯行手口は多くの憶測や風雪と混ざり合って、ロンドンの街を恐怖に突き落とすことになりました。
エリザベス・ストライド
三人目の被害者とされる女性です。後述のキャサリン・エドウッズと同じ日に遺体で発見されており、彼女の殺害でのみ、犯人と目される人物が目撃されています。
エリザベスは遺体が発見されるほんの数分前に殺害されたとも言われており、しかも犯人の目撃証言があったという事件ではありましたが、結局決め手が存在せず、ジャック・ザ・リッパーの逮捕には至りませんでした。