元禄文化とは?特徴から代表する人物・作品、化政文化との違いまで解説

社会の安定のため歴史学を確立させた「新井白石」「徳川光圀」

新井白石(1657〜1725)
出典:国立国会図書館

幕藩制社会における武士の役割を考えさせるため、歴史を考証する歴史学が確立したのも元禄時代です。6代将軍徳川家宣の元で正徳の治を行った新井白石は、「読史(とくし)余論」で徳川政権の正当性を説きました。

全部で397巻にも及ぶ「大日本史」
出典:wikipedia

水戸藩2代藩主徳川光圀は、100代の天皇の治世をまとめる「大日本史」の編纂を始めます。「大日本史」は明治時代にようやく完成するという大事業でした。「水戸学」とも呼ばれる尊王論が貫かれた歴史書であるため、幕末の志士たちが倒幕運動へと進んでいく思想的根拠となっていきます。

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役立つ学問である実学を修めた「貝原益軒」「渋川春海」「関孝和」

貝原益軒(1630〜1714)
出典:wikipedia

元禄時代に盛んになった朱子学は合理的な考え方をする学問であったことから、現実的な思考や実証的な姿勢に重きをおく学問が発達しました。

天体観測に使う天球儀の一種である渾天儀(こんてんぎ)
出典:文化遺産オンライン

動植物や鉱物の薬効を研究する「本草学」で知られる貝原益軒、日本独自の数学である「和算」を西欧数学の水準まで高めた関孝和、「暦学」で平安時代以来使用していた暦を一新した天文学者の渋川春海(安井算哲)は特に有名です。

元禄文化と化政文化の覚え方

どちらの文化も、出てくる人物が多くて覚えるのが大変ですよね。ここでは、元禄文化と化政文化に登場する特に重要な人物を、語呂合わせで覚える方法を紹介します。

元禄文化の語呂合わせ

菱川師宣の自画像
出典:wikipedia

元禄文化を語る上で欠かせない5人、近松門左衛門・井原西鶴・菱川師宣・尾形光琳・松尾芭蕉の覚え方です。

「元禄は、近(近松門左衛門)い(井原西鶴)日(菱川師宣)を(尾形光琳)待つ(松尾芭蕉)」

化政文化の語呂合わせ

葛飾北斎の自画像
出典: 和樂web

化政文化は特に有名な7人の人物名をおさえておきたいですね。浮世絵師の喜多川歌麿、俳人で画家の与謝蕪村、滑稽本作者の十返舎(じっぺんしゃ)一九、浮世絵師の歌川広重と葛飾北斎、東洲斎写楽、そして俳人の小林一茶です。

「火星(化政文化)に来た(喜多川歌麿)よ(与謝蕪村)、じゅ(十返舎一九)うた(歌川広重)ん買っ(葛飾北斎)と(東洲斎写楽)こ(小林一茶)」

元禄文化の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

「雁金屋草紙」

尾形光琳と乾山兄弟の実家である呉服屋の雁金屋を舞台にした小説です。第一回時代小説大賞を受賞しました。尾形光琳は芸術家としては超一流ですが、人間的にはお金持ちのおぼっちゃまで、女性関係も派手な、波乱万丈の人生を送っています。小説ではあるものの、そんな尾形光琳の人間性を垣間見られる作品です。

おすすめの映画

「天地明察」

2010年に本屋大賞を受賞した冲方(うぶかた)丁の小説「天地明察」の映像化作品です。主人公の天文学者である安井算哲(渋川春海)を岡田准一が演じています。日本独自の太陰暦を生み出すまでに大変な苦労があったとはいえ、どこか楽しげな様子が見ていて面白く、堅苦しくない、良い意味で時代劇らしくない映画です。

おすすめドラマ

「ちかえもん」

近松門左衛門の「曽根崎心中」が生まれるまでを描いた2016年放映のNHKドラマです。脚本を担当した藤本有紀は、この作品で第34回向田邦子賞を受賞しました。作品を生み出すまでにスランプで引きこもってしまう情けない近松門左衛門を、松尾スズキが愛嬌たっぷりに演じています。脇役も個性豊かで、最後まで目が離せないドラマでした。

関連外部リンク

元禄文化についてのまとめ

元禄文化では、江戸幕府を維持していくために多くの学問が発達しましたが、皮肉なことにその一部が幕末において倒幕運動の中心的思想となっていきます。陽明学や垂加神道、水戸学は、元禄時代では道理と政治は別物として捉え、幕府に批判的なものではありませんでした。しかし幕末において、幕藩体制を否定するために多くの志士たちが心の拠り所としたのがこれらの思想でした。

このように、元禄文化は歴史を突き動かした、大きなパワーを持った文化でした。それは学問に限ったことではなく、芸術は時代を超えて引き継がれていくものが数多く生まれました。尾形光琳が確立した琳派は、今も世界中のデザイナーにインパクトを与えています。初代市川團十郎の歌舞伎芸は継承され続け、近いうちに第十三代市川團十郎が誕生する予定です。

元禄文化は今も展覧会や舞台芸術で触れる機会が多い文化です。この記事をきっかけに、元禄文化に興味を持って、楽しむ機会が増えるようになったら嬉しいです。

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