元禄文化を代表する人物とその作品・功績
売れっ子作家だった「井原西鶴」
大坂出身の井原西鶴は、上方で流行していた自由で易しい誹風である談林派の俳諧師として活躍していました。その後、仮名草子を発展させた風俗小説である浮世草子を生み出し、第一作「好色一代男」は大評判となりました。
井原西鶴の浮世草子には、男女の好色生活を描いた好色物(代表作は「好色一代男」)、武家の生活を描いた武家物(代表作は「武道伝来記」)、町人物(代表作は「日本永代蔵」)があります。
井原西鶴とはどんな人?生涯・年表まとめ【代表作品や名言、俳句・小説も紹介】
俳諧を芸術にした「松尾芭蕉」
松尾芭蕉は伊賀上野出身の俳人で、連歌の発句にすぎなかった俳諧を、和歌と対等の芸術的地位まで押し上げたことで知られています。松尾芭蕉の誹風は「蕉風」と呼ばれ、言葉の可笑しさではなく、言葉の外側にある余情を大切にしました。余情を包むリズムである栞(しおり)や、自然に溶け込んだ枯淡の心境である寂びといった美意識に重きを置きます。
門弟である曽良と共に東北や北陸を旅した「奥の細道」や、関西から阿波方面を巡った「笈(おい)の小文(こぶみ)」といった俳諧紀行文が有名です。
松尾芭蕉とはどんな人?生涯や年表まとめ【俳句や名言、性格についても紹介】
東洋のシェイクスピアと言われる「近松門左衛門」
越前出身で京都で育った近松門左衛門は、三味線を伴奏楽器とする語り物である浄瑠璃の作者として修行を始めます。義太夫節を創始した竹本義太夫と組んで、世話物の代表作「曽根崎心中」など、現在の文楽の原型となった人形浄瑠璃で数多くのヒット作を生み出しました。他に近松門左衛門の有名作品として、時代物の「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」があります。
また、上方歌舞伎の代表的な役者である坂田藤十郎とのペアで、現在でも上演されているような歌舞伎の名作も世に送り出しました。そのため近松門左衛門は、「作者の氏神」「東洋のシェイクスピア」などと呼ばれ、その才能は今でも高い評価を受けています。
荒事の「市川團十郎」と和事の「坂田藤十郎」
17世紀初めに生まれた歌舞伎は、元禄時代には前髪を切り落とした野郎頭で舞台へ上がる野郎歌舞伎として全盛期を迎えます。常設の芝居小屋ができ、武士や町人が日常の娯楽として歌舞伎を楽しむようになります。
江戸では初代市川團十郎が勇猛な立ち回りを得意とする荒事(あらごと)を演じ、上方では初代坂田藤十郎が、色男役を優美に魅せる和事(わごと)の名手として高い人気を誇りました。
元禄を代表するトップデザイナー「尾形光琳」
京都呉服屋出身の尾形光琳は、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)や俵屋宗達といった先人たちの芸術を継ぎつつも、装飾性に富んだ「琳派」と呼ばれる画風を確立しました。絵画、工芸、着物のデザインなど、尾形光琳はさまざまな分野で活躍しました。その印象的なデザインは今も世界中のファンを魅了しています。
弟の尾形乾山(けんざん)は京焼の名工である野々村仁清(ののむらにんせい)に陶磁器を作る指導を受けました。斬新な意匠は兄の尾形光琳の作品にも通じるところがあります。