文学
『万葉集』
万葉集は7世紀前半から詠まれた和歌を収録し、780年に成立した日本最古の和歌集。天平年間に貴族、庶民、防人、東国の人々によって詠まれた和歌を収めており、約20年かけて大伴家持によってまとめられたと言われています。
現在の元号「令和」も万葉集から引用されており、日本の伝統文学が今日まで脈々と続いていることが分かりますね。
『古事記』
『古事記』とは日本最古の歴史書。全部で3巻にまとめられ、上巻には世界や日本の神々の誕生、国の成り立ちなどの神話的エピソード、中下巻には神武天皇から推古天皇の業績が記載されています。
『古事記』は、稗田阿礼(ひえだのあれ)が誦習したものを、712年に太安万侶(おおのやすまろ)が編さんし、元明天皇に献上されました。原本は存在しませんが、写本が複数伝わっています。
『日本書紀』
『日本書紀』は日本最古の正史(公的に作られた歴史書)。古代日本の律令国家が編さんした6つの正史の最初の歴史書です。天武天皇の命令で川島皇子が編さんし、720年に舎人親王(天武天皇の息子)によって成立しました。
全部で30巻あり、その多くに歴代の天皇の系譜と事績が記載されています。ほとんどが漢字で書かれていますが、万葉仮名による和歌が128首収められているのも特徴です。
古代日本を知るための貴重な史料として『古事記』と合わせて「記紀」と称されます。
『懐風藻』
『懐風藻』は日本最古の漢詩集。64人の作者による116首の漢詩を収録しており、その多くが一句が5字からなる五言詩。題目の中で最も多いのが宴会の詩、それに次いで遊覧、応詔が続いています。作者は天皇をはじめ、皇子や諸王、僧侶などの貴族が目立ちます。
編者は弘文天皇のひ孫の淡海三船(あわみのみふね)だとされています。
正倉院宝物
螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんごげんびわ)
螺鈿紫檀五弦琵琶は、8世紀の唐で作られた正倉院宝物の楽器です。宝相華(ほうそうげ)という花模様、ラクダに跨って琵琶演奏するペルシャ人が描かれている緻密なデザインが特徴。貝の内側の虹色光沢の部分を使用した技術が用いられています。
五弦琵琶はもともとインド発祥のものだと言われ、シルクロードから伝わった貴重な工芸品であることが分かりますね。
白瑠璃椀(はくるりのわん)
白瑠璃椀は、うっすらとした褐色がきれいに目立つカットガラスのお椀。ペルシャで作られたものだと伝えられています。でこぼことした表面は「亀甲繋ぎ」と呼ばれる技巧。この技巧は天平の時代に日本に伝わって以降、模様が連続していることから「永遠の繁栄を象徴する模様」として用いられるようになりました。
漆胡瓶(しっこへい)
漆胡瓶は、ペルシャ風の漆の水差しです。唐で作られたものが天平の時代に日本に伝わりました。鳥の頭に似せた蓋が付いているのが特徴です。
漆胡瓶の表面には「平脱(へいだつ)」と呼ばれる銀を文様のように切り抜いて貼り付ける技術が用いられています。漆胡瓶の素材は木と竹。この二つの素材をテープ状に巻きつけることで水が入っても丈夫であり続ける仕組みになっています。この技法は現在でも中国、韓国、タイで使われている技法です。
絵画
鳥毛立女屏風(ちょうもうりゅうじょのびょうぶ)
唐風の女性が描かれた屏風で、聖武天皇の遺品です。当初は女性の衣服部分に鳥の羽毛が飾られていました。現在そのほとんどが取れてしまっていますが、肩の部分にわずかに残っており、国産のヤマドリの羽だと分かっています。
江戸時代に絵師・住吉内記(すみよしないき)によって修理補筆されました。
薬師寺吉祥天像(やくしじきちじょうてんぞう)
薬師寺に所蔵にされている吉祥天女像の図。1951年に国宝に指定されました。奈良時代に行われた「吉祥悔過会(きちじょうかけえ)」という過去の罪科を悔い改める宮中行事の際に本尊として描かれたものだと推定されており、この吉祥天女像は771年に行われた吉祥悔過会の時のものだとされています。
縞模様や花文を散らしたデザインの衣服、S字型の姿態などから唐の絵画の影響を強く受けた貴重な絵画です。
過去現在絵因果経(かこげんざいえいんがきょう)
過去現在絵因果経とは、釈迦の前世における善行から悟りを開くまでの過程を絵画にした仏教絵画。下半分部分に経文を書き、上半分に経文に対応する絵画を描いており、奈良時代の原本も複数残されています。
繊細かつリアルな人間の描写と立体感のある山河から、唐の影響を色濃く反映していることが確かめられる希少価値の高い作品です。
まとめ
今回は、天平文化の特徴から花開いた背景、代表作品まで解説しました。
古代日本に花開いた天平文化。天平文化は今の日本にも大きな影響を与えている部分もあり、日本文化の礎になっていることを強く実感しました。海外の文化や宗教思想を融合させながらも、日本独自の美しさやたおやかさを生み出している天平文化を知ることは、日本のルーツをしることと同等の価値があるように思います。
この記事をきっかけに天平文化に興味を持っていただけたら嬉しいです。
你好