国・時代ごとの教養
古代ギリシャの「リベラルアーツ」
古代ギリシャの教養はリベラルアーツと呼ばれています。
古代ギリシャでは自由民と非自由民に分けられていました。リベラルアーツとは、自由民として教養を高める教育のことです。当時のギリシャは、生きるために必要なものは非自由民が労働することによって賄われていました。
要するに、自由民は働く必要がなかったのです。生きる上での不安がないため、リベラルアーツは自己実現のための教養が中心でした。数学や音楽、体育、文芸、哲学など現代人が持つ「教養」のイメージのような文化的なものが当時の教養だったのです。
ヨーロッパの教養
ヨーロッパでは、貴族同士の社交界で、指の先まで行き届いた美しい振る舞いや会話を楽しむこと、そしてそれに必要な知識や文化的な素養が教養とされていました。そのための知識として、中世から20世紀までの人々は上述した古代ギリシャのリベラルアーツを起源に持つ「自由七科」を学びました。
自由七科の詳細は国によって微妙に異なりますが、基本的には「三学(文法学・論理学・修辞学)」と「四科(幾何学・算術・天文学・音楽)」に分けられています。さらに、それら七科の上位に哲学をおき、論理的思考を教えていました。
近代ドイツの「ビルドゥング」
ビルドゥングとは、ドイツ語で「形成すること」です。近代のドイツで生まれた教養で、専門分野しかわからない専門家が増えたため、それに危機感を覚えた大学が用いました。専門分野の知識だけでは解決できない、複雑な問題に対応できるように多様な知識を身につけるのを推奨したのです。
結果的にドイツの教養は同じヨーロッパの教養と比べて、特徴のあるものとなりました。
ドイツでは、教養を身につけることは人間的に成長することと同義とされ、他国と比べると内面の成熟に比重を置いていることが特徴的です。他の国に見られるような身体作法や振る舞い、礼節は重視されていません。
アメリカの「リベラルアーツ」
アメリカの教養は「リベラルアーツ」です。アメリカは教養を重要視しており、特に先述した「自由七科」重視しています。しかし、時代と共に教養も変化するため、七科の他にコンピュータやサイエンスなど、新しいものを取り入れた教育がなされています。
また、アメリカではたいてい大学院の進学を目指すのも特徴でしょう。就職する学生ももちろん存在しますが、いったん社会へ出ても大学院へいくことがアメリカでは当たり前になっています。それほど、アメリカでは教養が重視されているのです。
中国の「四書五経」
中国では、四書五経や漢詩に精通していることが教養ある人物でした。四書五経とは「論語」「大学」「中庸」「孟子」「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」の総称で、簡単に言うと歴史や政治、文学、礼儀、哲学などです。
中国の教養は幅広く、人間に関わる学問だけでなく自然についても深く触れています。西洋との違いは論理学など、論理的な思考は重視されていなかった点でしょう。また、教養を得る順番も決まっていたことが特徴です。
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日本の教養
かつての日本は中国の影響を強く受けていたため、中国と同様に四書五経や漢詩が教養として重要視されていました。そして、時代が経るにつれ、日本独自の文芸や和歌が加わり、絵画を描くことも教養の一部となりました。shu
近代になると古典に精通し、政治や経済、社会の問題に鋭い発言ができる人が教養のある人とみなされるようになります。この頃になると西洋の教養であるリベラルアーツが主流となってきました。