太陽とは、自らエネルギーを作り出し、熱や光を放っている「恒星」と呼ばれる星です。
今から約48億年に、ガス星雲という、「うすい水素」があるだけだった何もないところに、突如として大きなガスの渦巻きが現れました。その中心には、あるガスの集まりがありました。これが、大昔の太陽の姿です。
当時の太陽は、大きなガスの渦巻きがあるだけど、まだ輝いていませんでした。太陽が輝き始めるのは、大昔の太陽の中心部分で、水素がヘリウムに変わる核融合が起こってからです。
地球は太陽を中心とした太陽系に属しています。太陽の生み出す光や熱は、地球以外の他の惑星にも多くの影響を与えています。
ですが太陽にはまだ判明していない謎も多く、世界中の研究者が日夜、研究・調査をしています。この記事では太陽の概要や構造から、太陽の歴史、雑学まで、現時点で判明していることをわかりやすく解説していきます。
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太陽とはなにか?簡単に説明
太陽とは、全体がガスでできた巨大な球体です。この球体は非常に大きく高密度で、地球とはその構造や成り立ちから、大きく異なる星です。太陽は常に球体の内部で核融合が起こり、熱や光などの莫大なエネルギーを生み出しています。
太陽は太陽系の中心に存在する唯一の恒星です。太陽系にある地球や火星などの天体の運動に関わっています。太陽が発する熱や光、太陽風は太陽系にあるすべての惑星、衛星に影響を与えています。
「太陽系」についてはこちらの記事で解説しています。
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太陽の概要
大きさ
太陽は直径約139万km(1.392×10⁹m)です。これは地球を横に並べたときに109個並んでしまうほどの大きさになります。他の惑星と比較すると、木星の約10倍ほどの大きさです。
体積は1.412×10²⁷m³です。これは地球の130万倍になります。非常に大きいことがわかりますよね。
重さ
太陽の質量は1.9891×10³⁰kgとなり、これは地球の33万倍といわれています。これは太陽系全体の99.8%もの割合を占めるほどの重さです。
地球との距離
地球とは約1億5千万km(1.47~1.52×10¹¹m)ほど離れています。これは新幹線で60年、自転車で570年ほどかかる距離で、途方もないほど遠く離れています。
そしてこの距離のことを「1天文単位(1AU)」と表現し、太陽系内における天体との距離の基準になっています。これまで1天文単位は誤差がありましたが、2012年の国際天文学連合(IAU)において1AUは149 597 870 700mと再定義されました。この距離は光が届くまでに要する時間が8.3分であるということから8.3光年分とも表されています。
太陽の構造
中心核
太陽の中心には直径20km程の「中心核」と呼ばれる核が存在します。この核は2000億気圧、温度が1600万度にも達するため、固体や液体の形で物質を保つことができず、プラズマと呼ばれる特殊な電離気体の状態にあります。
太陽は水素とヘリウムで構成されており、その内9割ほどが水素です。この中心核では水素を原料とした核融合反応が常に行われています。この核融合反応によって生じたエネルギーや発生した光・熱を外に放っているのです。
放射層
放射層は中心核を40万kmもの厚さで覆っています。この層は中心核の核融合反応によって発生した熱やエネルギーを外に運ぶ役割をしています。しかし放射層をエネルギーが通過するまでには長い時間がかかり、近年の研究では約17万年必要とされています。
この放射層には中心核の温度を維持する保温の役割もしています。中心核の核融合反応が起こりすぎると、中心核は温度が高くなりすぎてしまいます。高温になると、それに伴って圧力が上昇し、放射層を押し上げようとする力が働きます。この力によって中心核で作られたエネルギーは消費され、高まっていた圧力は低下し、核融合反応が鈍くなり、中心核の温度が低下します。
逆に中心核の温度が低温になりすぎると、放射層を中心としたガスが中心核へ移動し、中心核の密度が上昇、核融合反応が起こって温度が上昇します。このように常に安定して温度が保たれるような仕組みになっています。
対流層
対流層は放射層を厚さ20万kmで覆う層です。この層は中心核、放射層を通過してきたエネルギーをさらに外へ放出します。
しかし対流層のエネルギーの運び方は放射層と異なります。放射層を通過する時、中心核で生まれたエネルギーは電磁波に変化します。放射層は密度の高い層のため、電磁波となったエネルギーはあちこちに衝突し、通過するまでに長い時間がかかります。
それに対し、対流層は高温のガスが対流とよばれる流れを引き起こし、放射層を通過してきたエネルギーをさらに外へ運び出しています。
光球
太陽はガスでできているため、地球のようにはっきりとした地表のような表面があるわけではありません。そのため球殻状のおよそ500kmほどの大気を「光球」と呼んでいます。光球は中心核側と宇宙側で温度が異なり、中心核側は約6000℃、宇宙側は4400℃となっています。
光球はその大気内のガスを利用して、太陽内部の光を吸収しつつ、放射の働きをしています。これにより太陽は自身の輝きを維持しながら、太陽系の他の惑星へ光や熱といったエネルギーを届けています。
彩層
光球の外側にあるガスを「彩層」といいます。彩層は2000~3000km程度の厚さで、磁場の強い部分になっています。この強い磁気により、太陽フレアやプロミネンスと呼ばれる現象を発生させます。
肉眼では観測することのできない層ですが、皆既日食時などの特殊な観測条件でのみ観測することができます。また水素を検知するHα線による測定でも観測することができます。
コロナ
太陽全体を大きく包んで宇宙空間に広がっているプラズマを「コロナ」といいます。コロナの形は太陽表面の磁場の影響を強く受けるため、特有の形はありません。
明るさは光球の100万分の1といわれ、満月程度の明るさです。コロナは肉眼で観測することができ、皆既日食の際に黒い月の周囲で白く輝いている部分になります。
またコロナでは「コロナループ」といった特殊な現象が観測されます。コロナループはプラズマ構造で、ループの両端ではそれぞれS極とN極が観測されます。一般的には半円状のループ型のものが多いのですが、S字状に湾曲したものや先が尖ったものと、形状がさまざまです。
太陽の活動
太陽のエネルギー源
太陽が発しているエネルギーは核融合反応によるものです。これは太陽内部の中心核で行われており、水素を原料としています。4個の水素原子が激しくぶつかり合うことで核融合し、1個のヘリウムへと変化します。太陽は核融合反応によって常に高温の状態であり、それに伴い密度も上昇します。高密度の状態で水素同士が激しく衝突し、さらなる核融合反応を引き起こしています。
この核融合反応によって発生するエネルギーは4×10²³kWといわれています。このうち地球へ届くエネルギーは200兆kWで、これは原子力発電所2億基分となり、非常に大きなエネルギーを発していることがわかります。
しかし太陽を構成している水素にも限りがあります。これから約50億年ほどで水素は尽きるとされており、水素が尽きた後は、太陽は徐々に活動性が低下し、最終的に白色矮星と呼ばれるガスの塊へと変化します。
太陽磁場
太陽には地球の磁場とは大きく異なる固有の磁場があります。これを「太陽磁場」といいます。太陽磁場は太陽内部で生成され、光球、彩層、コロナを通過し、宇宙空間へと伸びています。
太陽磁場では水素やヘリウムの原子核と電子がばらばらになったプラズマガスが複雑に流れることで、磁場を形成しています。これまでプラズマガスの流れは無秩序に動いていると思われていました。しかし近年の研究結果により、活発に生じる磁場によって抑え込まれ、大きな流れだけが生成され大規模な磁場が発生するという仕組みになっていることが判明しました。
また、この太陽磁場と切っても切り離せない関係にあるのが「黒点」です。黒点は光球にある黒い点状のもので、温度は約4000℃で、太陽表面の温度よりも2000℃ほど低くなっています。黒点の温度が低い理由は、3000ガウスもの強い磁場が発生しているためです。強い磁場が発生すると、ガスの対流が妨げられてしまい、光と熱が外に出にくくなってしまいます。そのため他の表面部より温度が低く、黒い斑点のように見えるのです。
この黒点は太陽の活動の指標ともされていて、黒点の数が多いほど太陽の活動は活発と判断されます。しかしこの黒点の数は11年を目安に周期的に変化しており、1日で消える黒点もあれば、数日、数ヶ月と続くものもあります。
【3分で分かる】太陽黒点とは?周期や変化、温度、与える影響まで解説
表面現象
太陽の表面ではフレアという爆発現象が起きています。フレアは太陽表面にある黒点周囲で発生しており、磁場が複雑に絡み合うことで再結合し、急激に解放されることでエネルギーが発生しています。一回のフレアで10²²~10²⁵ジュールものエネルギーが発生しており、非常に大きなエネルギーが放出されています。
フレアが発生した部分は数千万℃まで上昇し、光速の電子や衝撃波、X線などが発生しています。これらが地球にある磁気を乱し、磁気嵐やオーロラを発生させています。
フレアにも、放出されるX線の強さや発した明るさによりA、B、C、M、Xとレベル分けされています。これまで観測された中で最も強いフレアは、1859年にリチャード・キャリントンという天文学者によって観測されました。このフレアにより、ハワイやカリブ海など通常では観測できない場所でオーロラが発生し、夜間であるにも関わらず、朝と勘違いしてしまうほどの明るさを地球へもたらしました。
またフレアと勘違いされやすいのが「プロミネンス」です。プロミネンスは紅炎とも表記され、コロナの内部にある彩層物質が吹き上がって発生します。プロミネンスはフレアとは違い、太陽の磁力線に沿って突出し、その大きさは地球をはるかに超える高さにまで達するものもあります。
簡単にまとめると、フレアは太陽表面で起こる爆発現象で、プロミネンスは太陽の磁力線によって突出した彩層物質を指す言葉です。
太陽風
コロナの内部でプラズマが溜まりすぎると圧力が高まり、宇宙空間へ放出されます。その際に噴き出したガスを「太陽風」といいます。この太陽風は太陽から磁力線に沿って噴出し、太陽系を超えた他の銀河まで届きます。太陽風によって地球の磁場は乱され、北極・南極でのオーロラを発生させています。
また太陽風は発生した場所により、速さや密度が異なります。フレアのような爆発現象で発生した場合、高速かつ高密度のガスとなります。
太陽の歴史
太陽が生まれる前~太陽誕生
太陽が誕生する前、ビッグ・バンにより誕生した初期の宇宙は、水素とヘリウムで構成され、わずかにリチウムやベリリウムなどの他の元素があるような状態でした。第一世代といわれる恒星が誕生し、その恒星内部で核融合反応が起き、酸素や炭素、窒素、鉄などの重い元素が作られるようになりました。やがてその恒星たちが「超新星爆発」を起こし、作られた元素たちが宇宙空間へ放出されました。
超新星爆発は質量の重い恒星が一生を終える時に起こる爆発です。恒星内部で水素が足りなくなってくると、恒星が徐々に収縮していきます。そうなると、元々恒星を支えていた圧力が小さくなり、周りの重力の方が強くなります。重力に耐え切れなくなった恒星は中心部から一気に崩壊し、大爆発を引き起こすのです。超新星爆発後、恒星があった中心部には中性子星かブラックホールのどちらかが形成されます。
超新星爆発によってさまざまな原子は宇宙空間に放出され、それらは銀河系を漂ううちに、濃いガス、薄いガスと濃淡の差が生じるようになりました。濃いガスは引力が働き、集まることによって大きなガス雲になっていきます。
ガスはもともと重力エネルギーを持っており、それにより熱が発生してガスの中心部が温まっていきます。大きなガス雲だとその分、中心部が高熱となり、1000万℃を超えるようになってきます。
このように高温の状態が続くと、水素同士の衝突による核融合反応が頻繁に生じるようになります。それに伴って、核融合反応による光が発生し、自分自身で光り輝くようになります。だんだんとガス雲の中心部の圧力も上昇し、やがて安定した恒星へと変化します。
このようにして第二世代、第三世代の恒星が誕生していきました。太陽は約46億年前、銀河系の中心から2.8万光年離れているところで誕生しました。太陽は水素、ヘリウムが中心となり構成されていますが、微量ではあるものの炭素や酸素などの他の元素も含まれているため、第二世代、または第三世代どちらかの恒星ではないかと考えられています。
誕生したばかりの恒星は活動的であることが多く、太陽も同じだったようです。爆発現象であるフレアが活発に起こり、太陽風も強く吹いていたと考えられています。また自転の速度も9日で1回転していました。現在は27日に1回転の速度のため、相当速いスピードで回転していました。
いつ生まれた?太陽誕生から現在までの歴史と太陽の未来について紹介
太陽誕生後~現在
誕生後、活動的だった太陽ですが、徐々に活動量が低下してきます。これは初期の太陽風が非常に強く吹いており、太陽のエネルギーを宇宙空間へ持ち出してしまったことや、核融合反応の原料となる水素が、初期の太陽より少なくなってきたことが挙げられます。現在は太陽風も落ち着き、安定した恒星として太陽系の惑星たちを照らし続けています。
太陽の雑学
なぜ太陽は輝いているのか
太陽は中心核で発生している核融合反応によって膨大なエネルギーを発しています。この反応により、太陽は水素爆弾数万個分という非常に大きな光と熱エネルギーを放出しています。
このエネルギーは中心核から太陽表面を通過し、約17万年かけて地球へと届いています。今、私たちが見ている太陽の光は17万年前の太陽が発したエネルギーなのです。
太陽の寿命
太陽の寿命はあと50億年程とされています。太陽が現在輝き続けられているのは水素による核融合反応によるものです。
しかし、このまま核融合反応が起き続けると、今から約50億年後に太陽の中心核にある単体の水素はなくなり、ほとんどがヘリウムへと変化します。ヘリウムは水素より大きい原子であり、ヘリウムの外側を囲う水素が燃焼することで、太陽の明るさは500倍に、大きさは100倍以上にも膨れ上がります。これは水星の軌道を飲み込むほどの大きさで、地球は巨大化した太陽に照らされることで、すべての水分が蒸発してしまうと考えられています。
太陽の表面の温度は4000℃程まで下がり、赤色巨星と呼ばれる恒星へと変化します。ヘリウムしかなくなった中心核では、ヘリウムを原料とした核融合反応が起きるようになり、炭素が作られます。炭素は爆発的な燃焼現象を引き起こし、太陽を纏うガスを吹き飛ばすようになります。ヘリウムがなくなった後は炭素を原料とした核融合反応、炭素がなくなった後は、酸素や窒素と続き、ますます太陽は高温かつ膨張していきます。やがて形を保てなくなった太陽は中心核のみが残った白色矮星という状態へ変化し、恒星としての役目を終えると考えられています。白色矮星となった後は、ゆっくりと冷えながら次第にその輝きを失っていきます。
, 太陽の寿命は残りどれくらい?計算方法から地球への影響まで解説
太陽が与える影響
地球への影響
太陽がなければ人類は誕生しなかった
太陽は誕生した後、周囲のガスを巻き込みながら徐々に大きさと輝きを増していきました。巻き込まれたガスの中で濃淡の差ができ始め、円盤状のガス雲が形成されます。さらにガスに含まれる小さな塵たちが円盤の中心に集まるようになり、やがてくっついていくことで「微惑星」と呼ばれる天体となりました。
微惑星同士が引力で引き合ったり、衝突し合ったりすることで合体し、徐々に大きくなっていきます。これにより微惑星が成長し、「原始惑星」となります。原始惑星として誕生した地球は、太陽系の中では唯一の水をもつ惑星です。
そして誕生してから1億年と長い時間をかけて厚い大気を生み出しました。大気は雲を作り、雨を降らせ、海を形成しました。海の中ではバクテリアや藻が、地上では植物がそれぞれ生まれ、光合成を行い、酸素を作り出しました。太陽による光がなければ光合成を行うことができず、地球で酸素が作られることはなかったでしょう。
太陽がなくなれば絶滅以外の道はない
また、仮に太陽の光がなくなれば、植物は枯れ始めます。植物が枯れてしまうことで、草食動物や昆虫のエサがなくなり、絶滅します。草食動物をエサとする肉食動物も同様に絶滅してしまいます。私たち人類も食糧不足に苦しむこととなります。
太陽の光の影響は食糧だけではありません。光は地球に明るさだけでなく、熱も与えています。光がなくなることで、地球の気温はどんどん下がり、3日~1週間程度で気温は0℃まで下がるといわれています。専門家によっては1年程で、-70℃以下まで低下するという見方もあるようです。時間の経過とともに地球の気温は下がり続けるため、そうなると呼吸をする生物は生き続けることはできません。
さらに光がなくなることで、地球は夜のような暗闇になります。しかも太陽の光を反射して輝いていた月も見えなくなってしまいます。そのため日夜の区別がつかなくなります。
太陽の影響はそれだけではありません。地球は太陽の周囲を1年かけて回っています。これは太陽の持つ巨大な引力で地球を引っ張っているためです。太陽がなくなると、地球を引っ張っていた引力も消失し、地球は宇宙空間に放り出されてしまいます。広大な宇宙をあてどなく漂う状態となり、他の星と衝突してしまう可能性もあります。
他惑星への影響
他の惑星にも地球と同様に多くの影響がでます。特に地球より太陽に近い水星、金星は太陽が膨張する段階で太陽に飲みこまれ、消滅します。
地球より外側にある火星や木星、土星、海王星は太陽の光の影響を受けるのが遅いため、地球が太陽消滅によりパニックになった時でも、いつもと同じように過ごすことができます。しかし地球と同様、気温の低下がもたらされる他、太陽による引力の消滅により、宇宙空間を漂うようになるとされています。
太陽に関するまとめ
太陽について概要や歴史など解説しました。いかがでしたでしょうか。
太陽はその誕生から現在に至るまで、多くの影響を太陽系の惑星に与えています。私たち人類も太陽がなければ、生活することができません。筆者もこの記事を執筆するにあたり、改めて太陽の偉大さや恩恵を知ることができました。
太陽の歴史や影響を紐解くことで、記事を読んだ皆様がより太陽や宇宙に興味を持っていただけますと幸いです。長い記事となりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
わかりやすいね!
分かりにくいわーーーーーーー!!!!
嘘です
めちゃわかりやすい
分かりやすかったです!
> こんにちはさん
コメントありがとうございます!