功績3「実は『ドラクエ』や『FF』の元祖の一人だった? 」
『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などのRPGも、元を正せばラヴクラフトの文学が源流となっている、という主張が存在しています。
その主張は、ラヴクラフトの描いた『クトゥルフ神話』の世界観が文学として書き継がれていく中で、TRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)が生まれ、そのTRPGから派生する形でビデオゲーム的なRPGが生まれたというもの。
もちろんその功績はラヴクラフト個人によるものではなく、エドガー・アラン・ポーやトールキンの『指輪物語』などの影響も加味したうえのものではありますが、実際そこまで荒唐無稽な主張ではないと思えます。
ともかく、ラヴクラフトという人物の功績が自身の文学ではなく”後世の創作の原型”に寄っていることも、ラヴクラフトという作家の特異性の表れだと言えるのではないでしょうか?
ラヴクラフトの作品年表
※”()”内は発表年のため、執筆時期とはズレが生じている。
単著
- サミュエル・ジョンソン博士の回想(1917年9月)
- 眠りの壁を越えて(1919年10月)
- ダゴン(1919年11月)
- ランドルフ・カーターの証言(1920年5月)
- ナイアーラソテップ(1920年11月)
- 北極星(1920年12月)
- 忘却の彼方へ(1921年3月)
- 恐ろしい老人(1921年7月)
- 無名都市(1921年11月)
- エーリッヒ・ツァンの音楽(1922年3月)
- セレファイス(1922年5月)
- 潜み棲む恐怖(1923年1月~4月)
- 眠りの神(1923年3月)
- 妖犬(1924年2月)
- 壁の中の鼠(1924年3月)
- 祝祭(1925年1月)
- 名状しがたきもの(1925年7月)
- 海底の神殿(1925年9月)
- 死体安置所にて(1925年11月)
- アウトサイダー(1926年1月)
- あの男(1926年9月)
- レッド・フックの恐怖(1927年1月)
- 異次元の色彩(1927年9月)
- ピックマンのモデル(1927年10月)
- クトゥルフの呼び声(1928年2月)
- 冷気(1928年3月)
- ダンウィッチの怪(1928年4月)
- 闇に囁くもの(1931年8月)
- 霧の高みの不思議な家(1931年10月)
- 魔女の家の夢(1933年7月)
- 蕃神(1933年11月)
- 向こう側(1934年6月)
- 狂気の山脈にて(1936年2月~4月)
- インスマウスの影(1936年4月)
- 超時間の影(1936年6月)
- 闇をさまようもの(1936年12月)
- 戸を叩く怪物(1937年1月)
- 忌まれた家(1937年10月)
- ネクロノミコンの歴史(1938年(月日不明))
- アザトース(1938年6月)
- チャールズ・ウォードの奇怪な事件(1941年5月、7月)
- 未知なるカダスを夢に求めて(1943年(月日不明)) など
共著、他者名義、代作など
- 這いよる混沌(1921年4月、ウィニフレッド・V・ジャクソン、エリザベス・バークレー名義)
- ファラオとともに幽閉されて(1924年5月、ハリー・フーディーニ名義)
- イグの呪い(1929年11月、ゼリア・ビショップ名義)
- 博物館の恐怖(1933年7月、ヘイゼル・ヒールド名義)
- 銀の鍵の門を越えて(1934年7月、エドガー・ホフマン・プライス名義)
- 永劫より(1935年4月、ヘイゼル・ヒールド名義)
- 墳丘の怪(1940年11月、ゼリア・ビショップ名義) など
ラヴクラフトにまつわる都市伝説・武勇伝
都市伝説・武勇伝1「クトゥルフ神話の原型は”ファンとの文通”にあった?」
ラヴクラフトが作り上げ、オーガスト・ダーレスによって体系化されたと言われるクトゥルフ神話。しかしラヴクラフト自身は、それらを完全にまとめて体系化しようとは考えていなかったらしく、彼の作品におけるクトゥルフ神話系の用語は、単純なスターシステムに終始していました。
しかし、その世界観に動きがあったのはラヴクラフトの死後、ラヴクラフト作品のファンであり、彼の文通相手でもあったダーレスは、ラヴクラフトの膨大な手紙のやり取りや作品から、彼が作り上げた設定群を体系化し、彼の作り上げた世界観を精密に体系化。こうして生まれたのが、ラヴクラフトの世界観である『クトゥルフ神話』という神話大系です。
ラヴクラフト自身ではなくそのファンによって体系化されたという点は、中々文学的なロマンを感じる部分ではないでしょうか。
都市伝説・武勇伝2「クトゥルフ神話に登場する日本の妖怪」
古今東西様々な作家によって書き継がれているクトゥルフ神話。その中には日本を舞台にした作品も存在し、そしてそこには当然”日本特有の怪異”も描かれています。
デイヴィッド・ファーネルが著したクトゥルフ神話作品『Yuki Onna』には、そのタイトルが示す通り”ユキ・オンナ”という旧支配者(クトゥルフ神話における架空の神々)の眷属が登場。「旅人を凍死させる」など、日本の伝承通りの行動をとる姿が描かれ、転じてクトゥルフ神話の内包する範囲の広さを示す存在となっています。
また、ユキ・オンナの派生形として”ユキ・オトコ”も作品に登場。こちらは青黒く変色した凍死体のゾンビとして登場し、人間を襲う怪物として描かれています。
こうしたクトゥルフ神話系の創作は、現在もプロアマ問わず盛んにおこなわれ、ネットなどでは多くの作品が出回っています。皆様の地元の土着伝承が描かれている場合もあるかもしれませんので、興味がある方はぜひ検索してみてはいかがでしょうか?