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阿部正弘とはどんな人?生涯・年表まとめ【死因や子孫、功績も紹介】

身分を問わずに意見を求める

阿部正弘は、海で遭難しアメリカに救助されたことで英語が話せたジョン万次郎を起用し、日米和親条約締結の際にも力を借りた。

この事態に正弘は、諸大名はもとより旗本にまで意見を求めます。今までは政治的な判断は江戸幕府が行うものという暗黙の了解がありました。そのため、外様大名や一般庶民が物申すことのできるという状況は、のちの公議政体論に通じる画期的な形式であったと言えます。

この方法が実現したのは、人の話をよく聞いて自分の主張をあまりしない正弘の性格もあったでしょうが、ペリー来航に対する危機意識の高さもあったでしょう。国難であると認識し、広く意見を求めたわけです。

勝海舟が提出した海防意見書

幕府に届けられた意見書は800通にも及びます。中には勝海舟の意見書もありました。諸大名の意見は半数以上が攘夷論でしたが、大砲で狙われたら江戸は火の海になってしまいますので、老中としてそれだけは避けなければいけません。結局、意見がまとまらないまま時だけが過ぎてしまいます。

海防掛

岩瀬忠震は島崎藤村の歴史小説「夜明け前」にも登場する。

正弘は外国船の来航に対する諸問題を担当し、海岸の防御を目的とした海防掛に、川路聖謨(としあきら)や岩瀬忠震(ただなり)といった才能ある人物を抜擢し、行政機関としての側面を持たせます。海防掛はのちの外国奉行です。

川路聖謨は奈良奉行時代に奈良の街に桜の植栽を行い、古代奈良の美しさを呼び戻した。

この人事は功を奏し、川路聖謨はロシアとの交渉を担当し、才能ある官吏だとプチャーチンが高く評価しました。岩瀬忠震は「幕末三俊」の一人であり、安政の五カ国条約の実務担当者となりました。

日米和親条約

ペリーは、日本が文明の技能を手にすれば将来はアメリカの有力な競争相手になるだろうと日本を高く買っていた。

1854年1月、ペリーが再び来航します。正弘の最大の目標は戦争回避でした。そのため正弘は鎖国を終わらせて国を開く決断をします。しかし、幕府の統制が及ばない自由貿易を行うことは許可したくないと考えた正弘は、開港はするが通商は拒否という、鎖国下に近い状況を守り抜いた条約締結に成功します。

アヘン戦争で中国の生糸輸出量が減った代わりに日本の生糸輸出量が急増し、外国商人が多く訪れるようになった。

実際、1859年に貿易が始まると、国内では大混乱となります。輸出が大幅に増えて金貨が海外に流出したことで物価が上がり、庶民の生活が苦しくなります。その不安が条約を調印した江戸幕府への反感となり、尊王攘夷運動に繋がっていきました。そう考えると、江戸幕府の老中として締結した日米和親条約は最善の策だったと言えます。

老中首座を退任

安政の大地震の際に出された瓦版

1855年10月2日、安政の大地震が江戸を襲いました。特に深川や本所の被害が酷く、江戸の死者は1万人前後と言われています。正弘は条約問題だけで相当疲弊していた状況に、地震からの復興という事態に直面し、老中職には留まるものの首座からは退くことにしました。

堀田正睦は蘭学を重視し「蘭癖」と呼ばれていた。

また、首座を降りた理由として、幕閣内での開国派の井伊直弼との対立もありました。攘夷派の徳川斉昭の意向で開国派の老中を更迭したことに対し直弼が反発したため、正弘は老中首座を退き開国派の堀田正睦(まさよし)を据えたのです。

老中のまま迎えた最期

谷中霊園には阿部家代々の墓が並んでおり、正弘もそのうちの一つに眠っている。

1857(安政4)年6月17日、正弘は老中職に就いたまま生涯を閉じました。享年39歳でした。死因は定かではありませんが、肝臓癌を患っていた可能性が指摘されています。海防掛の川路聖謨は日々の睡眠時間は2時間であったと述べていますが、これだけの激務で健康でいることの方が難しかったことでしょう。

阿部正弘の関連作品

おすすめ漫画

陽だまりの樹

1980年代に手塚治虫が幕末を描いた長編漫画で、第29回小学館漫画賞青年一般部門を受賞しています。主人公の一人である伊武谷万二郎の才能を認めて、登用するのが阿部正弘です。

この作品は手塚治虫の生んだ傑作の一つとも言われ、これまでにテレビアニメ、ドラマ、舞台と何度も形を変えてメディアミックスが行われています。

大奥

よしながふみ原作の「大奥」は、第5回センス・オブ・ジェンダー賞、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第56回小学館漫画賞少女向け部門など数々の受賞歴がある作品です。江戸城の大奥を舞台に、歴史上の男性が女性に、女性は男性に置き換えられて描かれているSFもので、阿部正弘は家慶編から幕末編で女性として登場します。

作品の前半部分は映画、テレビドラマでも放送されました。2020年末には16年続いた連載が完結し、最終巻となる19巻は2021年2月26日に発売されます。

おすすめ小説

安政維新

阿部正弘を主人公に描かれた小説です。ペリーが来航する前にアメリカの捕鯨船であるマンハッタン号が来航した際に阿部正弘がどう対応したのかなど、歴史の教科書では窺い知ることのできない話が多く取り上げられていて、とても興味深いです。

幕末政治家

幕臣で政治評論家でもあった福地源一郎(桜痴)が、徳川幕府で外交や内政に力を尽くした人物を取り上げてまとめたもので、阿部正弘も挙げられています。実際に幕末の動乱を経験している福地が論じているという点で異色の作品です。また、旧幕閣の要人から聞いた話など、福地にしか書けない内容もあり、一読の価値があります。

おすすめ大河ドラマ

篤姫

2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」では草刈正雄が阿部正弘を演じていました。篤姫自身が一橋慶喜を次期将軍にしようと推していたこともあり、同じ目的を持つ阿部正弘の登場シーンも比較的多かったです。大奥に人気がある老中という位置付けも表現されていましたし、過労でやつれていく様子を草刈正雄が丁寧に演じていました。

西郷どん

2018年NHK大河ドラマ「西郷どん」では、藤木直人演じる阿部正弘が登場しました。若いイケメンエリートを全面に出したキャスティングと話題になりました。阿部正弘は島津斉彬と親しい間柄でしたので、その家臣であった西郷隆盛は正弘に大きな影響を受けます。

青天を衝け

2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」にも初回から大谷亮平が演じる阿部正弘が登場しています。「篤姫」や「西郷どん」は主に薩摩藩という立場から見た幕府でしたが、渋沢栄一は幕臣という立場で幕末を捉えるため、これまでとは違った見方になりそうです。

関連外部リンク

阿部正弘についてのまとめ

阿部正弘が開国を決断したことは、太平洋戦争の開戦や終結と同じくらい、日本史上でも大きな方針転換の一つだったと思います。特に正弘は譜代大名であり、鎖国を破るという判断には大きなストレスがあったはずです。しかし彼が決めてくれたことで、日本は列強に攻め込まれることもなく、独立国として歴史を続けることができました。

そして、朧げでも見せてくれた日本の未来像は、正弘の死後も残された人たちが意思を引き継ぎ、形になっていきました。例えば海軍は長崎海軍伝習所出身の勝海舟や川村純義が創成期を担い、日清・日露戦争では戦果を上げるに至ります。正弘は若くして亡くなってしまいますが、その志は繋がれたと思うと多少救われた気持ちになりますね。

これだけの偉業を成しておきながら、活躍時期が幕末の初期だったこともあり知名度の低い阿部正弘。この記事が彼に関心をもつきっかけになれば嬉しいです。

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