天才作家!伊藤計劃とはどんな人?生涯・年表まとめ【死因や名言、作品についても紹介】

2017年 – ―歳「『虐殺器官』のアニメーション映画が公開」

『Project:Itoh』第3弾・『虐殺器官』

2月、度重なる公開延期により、公開中止も危ぶまれていた『虐殺器官』が遂に公開され、伊藤計劃ファンを大いに沸かせました。

アニメーション制作は、倒産してしまった”manglobe”から引き継ぐ形で、『ゴールデンカムイ』の”ジェノスタジオ”が担当。『虐殺器官』の制作継続を目的に立ち上げられたスタジオなだけに、その気合の入った映像は、観客の度肝を抜くことになりました。

主演を務めたのは中村悠一

キャスト陣も、主演に中村悠一。助演に櫻井孝宏、三上哲、梶裕貴、石川界人、小林沙苗など、人気と実力を兼ね備えたメンバーが勢揃い。乾ききった残酷な世界観を見事に表現し、観客の意識をスクリーンの中へと連れていってくれます。

そんな映像と演技のクオリティもさることながら、複雑な構成の原作から見事に要素を差し引きし、分かりやすさと『虐殺器官』らしさを両立させた脚本の手腕も、流石という他ありません。原作で重要な要素の一つは、丸ごと消されてしまっているのですが、その分原作とは異なる「映画版:虐殺器官」として楽しめる名作だという事に、疑いを挟む余地はないでしょう。

『虐殺器官』の公開により、3部作の公開が無事終了。『Project:Itoh』は、従来の伊藤計劃ファンの期待に応えるのみならず、新たな伊藤計劃ファンを作り上げるという、最高の結果を生みました。

伊藤計劃の名は全世界の人々の心に深く刻まれ、これからも彼の物語は続いていくのでしょう。

これがわたし。これがわたしというフィクション。わたしはあなたの身体に宿りたい。あなたの口によって更に他者に語り継がれたい。

伊藤計劃が遺した、この言葉をなぞるように。

伊藤計劃 の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

虐殺器官

伊藤計劃のデビュー作であり、代表作の一つです。内容の説明は、記事前半のトピックをご覧下さい。

伊藤計劃らしい、洋画的なミリタリーSF作品です。世界観が緻密に練り上げられ、まるでキャラクターがどこかのパラレルワールドに息づいているんじゃないかと錯覚しそうになる程の、リアルすぎて恐ろしい作品となっています。

SF好きやミリタリー好き、あるいは中2病の気がある方は、まずはこの作品から伊藤計劃に触れることをお勧めします。

ハーモニー

伊藤計劃の2作目の長編であり、遺作でもある作品です。内容の説明は、記事前半のトピックをご覧下さい。

伊藤計劃のブラックなセンスが光る、「ユートピアの臨界点」が描かれます。読み終えたとき、人によってはこれまでの価値観が反転してしまうかもしれない作品です。そうでなくとも鮮烈な印象を残す事は間違いない作品ですので、ぜひとも最後まで読み切ってください。

SF好きは勿論、ヒューマンドラマ好きの方にもおすすめの作品です。

屍者の帝国

伊藤の死後、円城塔との共著という形で出版された作品です。内容の説明は、記事前半のトピックをご覧下さい。

「伊藤計劃の世界を円城塔が描いた」作品であるため、伊藤計劃と円城塔という二人の作家の特色が混ぜ合わさった、重厚でありながら小気味よい物語が展開される作品となっています。少々文章の難しさや小ネタの多さはありますが、再読するごとにどんどん深みにはまっていくような世界観は、凡百の小説では味わえません。

世界観重視の作品が読みたい方にぴったりのSF長編作品です。

メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

この記事でも度々登場した『メタルギア』のノベライズです。

ゲームファンが読んで面白い作品なのはもちろんの事、ゲーム未プレイであってもキャラクター同士の関係性やストーリーを理解できる、「メタルギアの入門書」とも「メタルギアファンのバイブル」とも言える作品が本書となっています。

『虐殺器官』が刺さった、あるいは刺さりそうな方には買って間違いなしの作品です。

The Indifference Engine

伊藤計劃が様々な場所に寄稿した短編作品をまとめた1冊です。

伊藤の代表作である3作品に通じるエッセンスが散りばめられているのは勿論ですが、「007」シリーズのオマージュ作品なども存在するため、伊藤計劃ワールドを短い時間で知ることができる1冊になっています。

長時間の読書が苦手な方、あるいは時間的に難しい方は、まずはこの1冊から伊藤計劃に触れてみてください。

伊藤計劃記録 I・Ⅱ

本記事にもたびたび登場した個人ブログ『伊藤計劃:第弐位相』を中心に、インタビューや対談、寄稿したエッセイなどをまとめた本です。全2巻。

一人称小説という「キャラクター目線の」文章ではなく、伊藤計劃という個人の文章が読める書籍となっています。小説の重めの文章とは違い、割合軽めでユーモアにあふれた文章も多く、ともすれば笑ってしまうような文章も決して少なくはありません。

伊藤計劃という人物を知るためには、絶対に外してはならない本であると言えるでしょう。

伊藤計劃トリビュート

伊藤計劃に影響を受けた8人の作家による、アンソロジー集がこの書籍となります。

「伊藤計劃の世界」ではなく、「それぞれの作家が描く、伊藤計劃以後の世界」は、どれも読み応えばっちりの名作揃い。脈々と受け継がれる伊藤計劃の息吹を感じられる作品集となっています。

ニューロマンサー

伊藤計劃がサイバーパンクにハマったきっかけとして挙げた作品です。厳密には「黒丸尚の文章にハマった」とも言っているため、訳者には注意してご購入ください。

内容自体は割と古典的なサイバーパンクSFですが、それを1986年に描いていた作者の先見の明に驚かされる作品となっています。

「伊藤計劃”っぽさ”」を感じるところも多々あるため、伊藤計劃作品を「面白い」と感じる方には、読んでみて損はない作品だと言えるでしょう。

太陽の帝国

『虐殺器官』作中で触れられた作品です。作中では「乾いていて残酷」と表現されています。

作中での評価の通り、「乾いていて残酷」な世界観は、たしかに『虐殺器官』を彷彿とさせる作品となっています。少々難しい作品ではありますが、『虐殺器官』、ひいては伊藤計劃作品の理解を深めるには、なるべく読んでおきたい作品の一つです。

フランケンシュタイン

『屍者の帝国』の元となった作品の一つです。「フランケンシュタイン」と聞くと、最近ではハロウィンの仮装などでも定番のため、耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか?

かなり古い作品のため、若干筋の通らない部分や雑な部分は散見されますが、それでも語り継がれ、多くの作品の元ネタとなったアイディア力には目を見張る他ありません。

『屍者の帝国』に挫折した方は、まずはこの作品を読んでから再び挑戦してみると、幾分か分かりやすく読めるかと思います。

蘇る伊藤計劃

端的に「伊藤計劃がどれだけの人物に影響を与えたのか」がわかるファン必携の一冊です。伊藤計劃の未発表の短編『海と孤島』や、大学時代の受賞作『ネイキッド』なども収録されており、伊藤計劃の魅力が余すところなく詰め込まれています。

伊藤計劃作品の魅力だけでなく、伊藤計劃という作家自身の魅力や、作中世界を引き立てるビジュアルワークまで、多くの特集が目白押しの一冊ですので、ファンであればぜひお買い求めの上、永久保存してほしい一冊だと言えるでしょう。

おすすめの映画

屍者の帝国

『Project:Itoh』の1作目となった作品です。

原作とは少々異なる人物設定やストーリー展開ですが、その分わかりやすく話が進み、『屍者の帝国』の世界観を映像として堪能することができます。バトルあり、笑いあり、サスペンスあり、スリラーありと、様々な要素が含まれているため、全く飽きずに視聴できるのもこの作品の魅力の一つでしょう。

また、原作と異なった人物設定にも、監督や原作者の「あるメッセージ」が込められているのだとか……。

伊藤計劃ファンはもとより、読書が苦手な方、あるいは『屍者の帝国』を読むのに挫折した方にこそ見てほしい作品となっています。

ハーモニー

『Project:Itoh』の2作目に当たる作品です。

原作のストーリーはほとんどそのままに、優しく思いやりがあり、それでいてひどく残酷で美しい「ハーモニー」の世界が、映像として見事に表現されています。

原作を読んでから映画を見ても、映画を見てから原作を読んでもいい。原作付きの映画としての、一つの完成系とも言える作品が本作だと言えるでしょう。

虐殺器官

『Project:Itoh』の3作目。度重なる公開延期の末に、満を辞して公開された作品です。

ミリタリーSFとしてのスピード感や、伊藤計劃作品らしい思索的な間の取り方など、スタッフの愛が随所に感じられる、ファン必見の良作となっています。特にミリタリーガジェットの作画は素晴らしく、あまりのリアルさに息を呑むことになるのは間違いありません。

原作からオミットされた部分もあるため、まずは映画を視聴し、それから原作に入るとより分かりやすく世界に浸ることが出来るかもしれません。浸ったことでどうなるのかについて、保証はできかねますが。

CURE

伊藤計劃が「『虐殺器官』の発想の出発点」とまで言った作品です。

端的に言って「とんでもなく怖い映画」です。筆者はこれを数年前に視聴し、正直なところトラウマになっています。ホラーではありませんが、下手なホラーよりも恐ろしい作品です。

ですが、伊藤計劃に興味のある方、あるいはファンの方はぜひ最後まで見てほしい作品にもなっています。伊藤計劃ワールドを知るには必見、しかし覚悟してご覧下さい。

プライベート・ライアン

言わずと知れた戦争映画の名作です。『虐殺器官』作中に度々名前が登場し、「ある事柄」の象徴として扱われています。

不朽の名作として、映画そのものが楽しめる作品なのは勿論ですが、『虐殺器官』を読破してから見ることで、これまでの自分に怖気が走ることは間違いありません。

是非とも『虐殺器官』を読む前に一度ご視聴いただき、読破後にもう一度の視聴をお願いしたい作品となっています。

モンティ・パイソン・アンド・ナウ

『虐殺器官』作中に登場するコミカル要素の、ほとんど全てを担っている作品です。

ナンセンスでシュールなそのユーモアセンスは、どこか伊藤計劃の持つユーモアセンスと通じているように感じます。

合わない人にはとことん合わないコメディですが、『虐殺器官』中のコミカルな要素について知りたい方は是非ともご覧下さい。

関連外部リンク

伊藤計劃についてのまとめ

いかがでしたでしょうか?伊藤計劃について、少々熱を込めて執筆させていただきました。いささか熱を込めすぎて、べらぼうに長い記事になってしまったことについては、現在深く反省しております……。

その深すぎる洞察力をもって、多くの人々を魅了する作品を書き上げながら、34歳という若さでこの世を去った伊藤計劃。彼が生きて、現在も作品を発表していたなら……。彼の作品に魅了された筆者は、無駄だとわかりつつも、時折そう夢想せざるを得ません。

時折「伊藤計劃は死んでカリスマになった」と言う方もいらっしゃいますが、筆者はそうではないと思います。というかむしろ、伊藤計劃はその扱われ方に苦笑するのではないかと思っています。彼は作品において、「神」ではなく「観察者」でした。作品世界を俯瞰するのではなく、彼自身が作品の中にいて、主観の目で物語を見据えていたからこそ、多くの人を魅了する名作を生み出せたのではないかと思います。

もっとも、上記は全てこの記事の筆者の解釈です。もちろん違う解釈の方もいらっしゃるでしょうし、伊藤計劃自身も違う考えを持っていたかもしれません(というより、持っていたでしょう)。

この記事を読んで伊藤計劃に興味を持ち、「この筆者の解釈はおかしい!」などと思った方と議論ができるようになれば、それは筆者として望外の喜びです。何卒宜しくお願い致します。

それでは、べらぼうに長い記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

この記事を読んだ方が伊藤計劃の世界に飛び込んでくれることを、彼の1ファンとして、影ながら願っています。

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1 COMMENT

匿名

扱うジャンルがSFである限りは彼の扱った意識や死の概念、SF的ガジェットもやがては古びていくかもしれません。
しかし、彼の特異なリーダービリティだけは現代の日本SF界における一つの到達点だと思っているのでこれからも読者を獲得し続けるんだろうと思っています。
蠱惑的と表現される乱歩の文体がそうであるように。

片手間で終わっていない素晴らしいまとめだと思いました。お疲れ様でした。

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