ニコラ・テスラとエジソンの「電流戦争」とは?
ニコラ・テスラとエジソンの関係性は、一言で言って「凄まじく険悪」なものでした。彼らの確執の事を指して「電流戦争」と表現される辺り、その険悪さは伺い知ることができます。
この「電力戦争」は、若きテスラがエジソンの電力会社に入社したことから始まりました。当時のテスラはエジソンのことを「革新的な発明家」としてとてもリスペクトしており、エジソンの会社に入社したのも、そこで自分の才能を発揮したかったからだと記録されています。
先述している通り、当時の電力技術の最新盤はエジソンの「直流方式」でした。工場の機械類は全て直流方式で稼働しており、エジソンはその設計に誇りを持っていたようです。
しかしテスラは、直流方式での送電に「エネルギーの無駄がある」と考え、エジソンに「交流方式」の発電の導入を直訴。これを認められなかったエジソンは「もし工場の機械群を交流方式で稼働させることができれば、君に5万ドルを支払う」と約束します。
「交流方式で機械を稼働させるのは不可能だ」と考えていたゆえの発言でしたが、テスラは交流方式で工場を稼働させることを成功させてしまい、エジソンに5万ドルの支払いを要求。これに焦ったエジソンは「冗談のつもりだった」と支払いを拒否し、これによって激怒したテスラとの「電流戦争」が始まるのです。
彼らの「戦争」は、後年に至るまで長い間続き、彼らは長い間、お互いの送電方式への批判と反証を繰り返す、子供の喧嘩のようなやり取りを繰り広げています。
そんな彼らのエピソードについては、後のトピックで語らせていただきます。
ニコラ・テスラの死因は?
様々な画期的な発明を作り上げ、人類の文明に大きく貢献したニコラ・テスラ。
しかし残念なことに、彼の研究は当時の社会からはほとんど認められず、晩年のテスラは金銭苦の中で、孤独なホテル暮らしを送っていたようです。
そんな苦しい暮らしを続けていたテスラは、1943年1月7日に、ニューヨーカ―ホテルの一室で、孤独に息を引き取ったと言われています。死因は冠動脈血栓症とされ、彼は亡くなった時点でほとんど無一文の状態だったそうです。
彼の死後、数トンにも及ぶはずの発明品やそれらの設計書は発見されず、「FBIとアメリカに没収された」「ユーゴスラビア経由でソ連に横流しされた」と噂になりましたが、実際はFBIによって複製された後に、母国であるセルビアに送られて、現在ではセルビアのニコラ・テスラ博物館に所蔵されています。
ニコラ・テスラの名言は?
あなたの憎しみを、電気に変換してしまいなさい。そうすれば世界全体が明るくなる。
あまりにも多くのアイデアが頭を通過したので、ほんのわずかしか捕まえられなかった。
天才とは、1%のひらめきと99%のムダな努力だ。
私は実際の作業を性急に進めるような事はしない。まずは頭の中で装置を動かし、改良を行っていく。実際に工場で試験を行うのも思考の上で試すのも、大した違いはないのだ。
昨日の驚異は、今日の一般的な出来事に過ぎません。
現在は彼らのものかもしれないが、未来は私のものだ。
ニコラ・テスラは一体何がすごいのか?
すごさ1「IQ240」の超天才的頭脳
おそらく、数字としてテスラの凄さを最も示せるのは、この部分だろうと思います。「IQ240」というのは、ここ100年や200年どころか、人類の誕生から現在に至るまでの中で10本の指に入ってしまうほどの凄まじい頭脳です。
創作のキャラを引き合いに出すのであれば、シャーロック・ホームズが設定上は「IQ190」、『バットマン』のブルース・ウェインが「IQ192」と言えば、その超人的なIQの凄さは理解しやすいかもしれません。
事実として、あまりにも画期的な発明で、人類の文明レベルを数段階引き上げるような功績を残したニコラ・テスラ。そんな彼がシャーロック・ホームズ以上の頭脳を持っていると言っても、確かに納得できるところかもしれません。
すごさ2.「研究の正しさを証明するため、自分の体を実験材料にする胆力」
創作の世界ではマッドサイエンティストがよくやる事ですが、現実でそれをやれるような人物はそう多くありません。しかしテスラは自分の主張した「交流電源システム」の正しさを証明するために、「自分の体に交流電源から電気を流しながら読書する」というパフォーマンスを披露しています。
最も、テスラがこんなパフォーマンスに走ったのは、前述のエジソンとの確執があってこそ。エジソンによる交流電源へのネガティブキャンペーンへの対抗策として、テスラはこのような手段で、交流電源の安全性をアピールしたのでしょう。
とはいえ、一歩間違えれば確実に死んでしまうほど行為なことには違いなく、テスラが自分の主張する交流電源に、よほどの自身を持っていたことが伺えます。決して真似してはいけない――というより、基本的に真似できない行為ですが、「正しい!」と確信できることを貫き通すその姿は、現在の我々も可能な限り手本にしたいものです。
すごさ3.「徹底的な理論科学の信徒」
エジソンが残した有名な言葉には「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」という言葉があります。対するテスラはこの言葉を皮肉るように「天才とは、1%のひらめきと99%のムダな努力だ」という言葉を残しています。
エジソンとの確執があったからこその発言でもありますが、実際に何度も実験を行い、何度も失敗を積み重ねながら新たな発見を行っていた実験科学者のエジソンに対し、テスラは何度も思考実験や理論の確認を行い、完全に成功を確信してから実験を行うタイプの理論科学者だったようです。
そのため、テスラの実験にはほとんど無駄な部分やコストが存在しておらず、それ故に彼は様々な分野の研究をひとりで担い、多くの発明を残すことに成功したのでしょう。「1日16時間働く」と公言して、その通りに働いて多くの発明品を残したエジソンとは、この点についても真逆です。
世間的に評価を受けやすいのは、愚直な努力家に見えるエジソンの方ですが、実際にムダやコストを省いて文明を前に勧められるのは、テスラのような理論科学者の方。一概にどちらが良い、悪いと言える問題ではありませんが、テスラのように無駄を極限まで省くやり方も、地味ではありますが評価されるべき事柄だと思えます。