犬養毅とはどんな人?生涯・年表まとめ【性格や政策内容、五・一五事件の真相も】

1931年 – 76歳「犬養内閣発足」

犬養内閣発足時の様子

犬養内閣発足

憲政の常道に従って政友会に政権が移り、12月に犬養毅内閣が発足します。犬養が初めて衆議院議員になって実に41年もの歳月が経っていたのです。主な政策は「犬養内閣で行った政策の内容とは?」で述べた通りです。

犬養は軍備と財政の協調を図る経済軍備論、中国とのパイプを活かした満州事変の処理など、独自の政策を温めていました。総理大臣となり犬養はようやく自分の政策を実行出来る立場になったのです。

ファシズムの流れを止められず

暴走し始めた軍部ですが、内閣でも軍部に歩み寄る政治家は数多くいました。犬養は中国国民党幹部と非公式の講話の場を画策しますが、犬養の外交を批判していた内閣書記官長の森恪に握り潰されていたのです。

そして犬養は一部の陸軍の青年将校の行動に不安を抱き、陸軍の長老に相談していました。その将校達を免官させる計画を森に話した結果、森は陸軍に計画を話してしまいます。陸軍は統帥権の干犯だと犬養を批判しました。

「統帥権」という言葉は犬養の想像を遥かに超え、コントロールの及ばない事態になっていくのです。

1932年 – 76歳「五・一五事件により暗殺される」

犬養毅の葬儀の様子

五・一五事件により暗殺される

前述した通り、犬養は1932年5月15日に海軍の若手将校により暗殺されました。「話せばわかる」という言葉は命乞いではなく、最後まで対話を重視した犬養ならではの言葉でした。

五・一五事件の発端は与党だった民政党がロンドン海軍軍縮条約に調印した事です。犬養は条約に関与せず、むしろ「統帥権の干犯」という言葉を生み出した経緯から、軍部に感謝されても良かったはずです。

ただ若手将校達はこれらの政治的な背景を把握しないままに総理大臣を標的にした為、犬養は暗殺されたのでした。統帥権干犯問題は犬養にブーメランのように跳ね返ってきたのです。

政党政治の終わり

犬養暗殺後に総理大臣になったのは海軍軍人の斎藤実でした。元々は政友会総裁の鈴木喜三郎が任命される予定でしたが、ファシズムに近い人物だった為、西園寺公望は危険と判断。穏健派の斎藤に白羽の矢が立ったのです。

西園寺は時が来れば政党内閣を復活させる予定でしたが、結果的に犬養内閣は戦前最後の政党内閣となりました。犬養達が積み上げた戦前の政党政治は、皮肉にも犬飼の死をもって終わりを迎えたのでした。

犬養毅の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

狼の義 新 犬養木堂伝

2017年に逝去した林新の意志を継いで堀川惠子が書き上げた小説です。西南戦争から五・一五事件という政党政治の始まりと終わりまでの道程が犬養の時点で描かれており、その苦悩や葛藤が伝わってきます。

歴史書としても小説としても読みやすいので、犬養毅を知る上ではオススメの1冊です。

五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」

五・一五事件で犬養毅が暗殺された時、多くの助命嘆願書が政府に届きました。青年将校達にこれだけの同情が集まったのは何故でしょうか?本書は五・一五事件前後の歴史や思想、様々な切り口で考察がされています。

五・一五事件について更に深く学びたい時にオススメの一冊です。

池上彰と学ぶ日本の総理 第24号 犬養毅 (小学館ウィークリーブック)

池上彰と共に総理大臣について学ぶ事が出来るウィークリーブックです。犬養内閣発足時の国内や世界の情勢や、内閣の政策などが分かりやすい書かれています。犬養毅の生涯を分かりやすく知りたい方におススメです。

おすすめの動画

【演説】犬養毅「新内閣の責務」 1932総選挙 Japanese PM TSUYOSHI INUKAI

五・一五事件直前の犬養の演説であり、江戸時代生まれの人物の肉声という意味でも貴重です。動画は音声のみですが、演説内容が文字で表示されている為分かりやすくなっています。

聴く者の背筋を凍らせる程の演説を是非直接聞きたいと思いました。

憲政の神様 犬養毅

犬養毅の生涯をダイジェストで紹介した動画です。幼少期の写真から大物政治家との集合写真等、犬養の貴重な写真がたくさん載せられています。5分程で観れるので、簡単に犬養について知りたい時にもオススメです。

五・一五事件 「話せばわかる」の真実とは?

五・一五事件が起きた日、首相官邸には家政婦がいて、その一部始終を見ていたそうです。目撃者による生々しい証言が事件の深刻さを克明にしています。

おすすめドラマ

今のところ犬養毅を主役にした映画やドラマはありません。ただ五・一五事件は軍部の暴走を象徴する事件なので、戦前を舞台にした映画では物語のターニングポイントとして登場する事がありますね。

経世済民の男 高橋是清

オダギリジョー演じる高橋是清の生涯を描いた作品です。高橋は犬養内閣の大蔵大臣に就任した他、護憲運動でも共に活躍しており、高橋の人生を語る上で重要な役回りです。

犬養毅を演じているのは舘ひろしであり、白髪で白髭という珍しい姿を観る事が出来ます。

いだてん〜東京オリムピック噺〜

2019年の大河ドラマであり、東京オリンピックを題材にした作品です。犬養は28話の「走れ大地を」に登場しており、平和の式典であるオリンピックに好意的な姿勢を見せていました。

犬養を演じるのはベテラン俳優の塩見省三です。登場したのは僅か1話だったものの、五・一五事件の壮絶な最期は話題になり、Twitterでも大きな話題となりました。

関連外部リンク

犬養毅についてのまとめ

今回は犬養毅の生涯について解説しました。犬養毅の生涯が分かりにくいのは、戦前の政治の背景をしっかりと把握する必要があるからだと思います。戦前の日本に政党政治を根付かせたのは間違いなく犬養毅の功績でした。

一方で晩年の統帥権干犯問題は軍部の暴走に繋がる失言でした。五・一五事件の最期はある意味で因果応報だったとも言えるのです。犬養毅を知ると政治家が持つ言葉の重みを感じさせます。

今回の記事を通じて犬養毅に興味を持っていただけたら幸いです。

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