世界に星の数ほどいる映画監督の中でも、世に名の知られた、巨匠と言われる監督はそう多くありません。彼らは独自の世界観を持ち、自らの理想とする映画を突き詰めていったからこそ、世界的に評価され、今も語り継がれているのです。
この記事では、そんな伝説的な映画監督をその作風や代表作とともに30人紹介します。ジャンルも国籍も、メジャーからインディーズまで様々な監督を取り上げました。生まれ年順に挙げていますので、意外な監督同士が同世代であることにも驚くかもしれません。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
世界的に有名な映画監督
溝口健二
ワンシーン・ワンショットで有名な溝口健二は、世界の名だたる監督が絶賛してやまない日本の巨匠です。特にフランスのヌーヴェル・ヴァーグの映画監督に多大な影響を与えました。
溝口健二の代表作といえば、1953年に公開された「雨月物語」です。第14回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しました。
1954年に公開された「山椒大夫」は、第15回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しました。ジャン=リュック・ゴダールが、この映画のラストシーンを自作に引用していることはよく知られています。
アルフレッド・ヒッチコック
イギリス出身の映画監督であるヒッチコックは、サスペンス映画の神様とも呼ばれます。後世の映画に大きく影響を与える作品を多数遺しました。本編に本人がカメオ出演するのも、映画ファンには嬉しいお約束です。
「めまい」は1958年に公開され、世界中の映画評論家がこぞって絶賛したことでも知られます。
「サイコ」は1960年に公開されて以降、数々のオマージュ作品が生まれた名作です。第33回アカデミー賞にノミネートされました。
小津安二郎
ローアングルの構図で知られる小津安二郎の作品は、家族関係の移り変わりなど普遍的といえるテーマを掲げ、国内外で高い評価を得ています。美しい構図を追求し続けるため、役者の立ち位置はもちろん、小道具の場所まで徹底的にこだわるなど、「小津調」とも呼ばれる手法を築き上げて製作していました。
1953年に公開された「東京物語」は、映画監督が選ぶ世界の映画トップ100の第一位に輝いた傑作です。英国映画協会の映画賞である「サザーランド杯」を受賞しています。
成瀬巳喜男
職人肌の監督として、黒澤明が尊敬していたといわれる成瀬巳喜男は、女性を描く作品で特に評価が高く、世界的にも有名です。リアリズムを追求した世界観は、同世代の小津安二郎とは違った魅力があります。
1955年公開の「浮雲」は、成瀬巳喜男の代表作と言われます。1955年のキネマ旬報ベストワン、ブルーリボン賞、第10回毎日映画コンクール日本映画大賞を受賞しました。成瀬の世界的な評価が高まったのは死後のことで、今では黒澤・小津・溝口・成瀬の4人が日本出身の映画界の巨匠と呼ばれています。
黒澤明
黒澤明は、「世界のクロサワ」として名だたる巨匠が尊敬してやまない日本の映画監督です。娯楽作品でありつつも、そこに斬新さがあり、演出とカメラワークの見事さは今や映画学校の手本として使われるほどです。
「七人の侍」は1954年に公開され、第15回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した本作は、今見てもスタイリッシュで色褪せない演出です。
「羅生門」は1950年に公開され、黒澤明の出世作と呼ばれる作品です。第12回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。