アパルトヘイト撤廃後の社会と現在
黒人の権利回復は困難を極める
アパルトヘイトが撤廃された後も、南アフリカには様々な課題が残されていました。中でも大きかった課題は、アパルトヘイト政策によって受けた生活水準の格差。そして、反アパルトヘイト運動によって受けた経済制裁による不況です。
マンデラ大統領は、黒人に対して財産を再分配したり、住宅の建設や公共事業による雇用の確保などを計画しました。しかし、思うようには進まずに失業率・犯罪率ともに増大します。
新しい大統領が就任しても状況は変わりませんでした。企業に対して黒人の雇用を義務化するも、十分な教育を受けていない黒人たちは職種に就けなかったのです。その結果、教養のある黒人とその他大勢の黒人の間に貧富の差が生まれてしまいました。
また、アパルトヘイトが撤廃されたといっても人々の心の中には未だに対立意識や差別意識が残っています。アパルトヘイト時代に慣れてしまった人種差別的な生活様式はそう簡単に変えられるものではありません。
社会的にも精神的な立場にも、黒人をはじめとする有色人種たちの権利回復は非常に難しいものです。アパルトヘイト時代を生きた人々にとっては、今もなお続いている問題といえるでしょうね。
他国でもアパルトヘイトが発生?
南アフリカで施行されたアパルトヘイトですが、他国でも同じような政策が行われています。それが、パレスチナ問題におけるパレスチナ人への差別です。
パレスチナ問題とはパレスチナ人とイスラエル人との間で行われている争い。長期にわたって和平を進めるものの未だ続いている紛争ですが、ここにおいてパレスチナ人へのアパルトヘイト的な差別が発生しています。
パレスチナへ移住してきたユダヤ人がパレスチナ人に対して教育や労働、選挙権や住居など生活の基本となる権利を取り上げているというのです。さらには、イスラエルまでユダヤ側につき、パレスチナ人を迫害し始めています。
アパルトヘイト政策は南アフリカだけでなく、諸外国の民族にまで「差別」という意識を植え付けてしまったのですね。
現在も黒人の権利を求める運動は続く
1950年代から1990年代において、黒人差別の代表的な政策とされたアパルトヘイト。数十年前の出来事でも、決して過去のことではありません。現在でも黒人の権利を求める運動は続いているのです。
2012年、アメリカで黒人の少年が白人警官に射殺される事件が起きました。それに対して、SNS上にて「#BlackLivesMatter」という言葉が拡散。様々な日本語訳がありますが、「黒人の命は大切」という意味が1番合っているでしょう。
しかし、悲しいことにその後も白人警官による黒人への暴力は絶えず、2020年には黒人男性が白人警官の過剰な拘束によって死亡する事件が発生。これによって、アメリカでは「#BlackLivesMatter」を略したBLM運動が活発に行われるようになりました。
BLM運動の様子は、まるで反アパルトヘイト運動のようです。細かい内容は違えど、黒人差別に対する人々の抗議運動は今もなお続けられている証拠ですね。
藤田さんへ
レキシル記事の「アパルトヘイト」を読んでいただきありがとうございます!さらにコメントまでしていただいて、とても嬉しいです。しかも、なんと私の記事をもとに授業内容を構成してくださったとのこと!身に余る光栄でございます。生徒さんたちに少しでも分かりやすく「人種差別」や「人権問題」などが伝われば幸いです。
私も中学生の時には「受験勉強」としての世界史を学んだ記憶があります。藤田さんと同じく、大学生になってから改めて「視野を広げる世界史」を学びました。中学生という若い時期から「事実・影響・背景」をふまえた世界史が学べたら、大人になったとき世界を見る視野が広がっていると思います。明日の藤田さんの授業で、多くの生徒さんが「アパルトヘイト」による人種差別の悲惨さや人権問題に関する人々の動きに注目してくださることを祈っています。
改めて、この度はコメントいただきありがとうございます!今回ご紹介いただいた「ENGLISH SOCIAL HISTORY」、とても気になるので一度読んでみますね! noteでの藤田さんの記事も少しずつ楽しみに読ませていただいております。これからもよろしくお願いいたします。
こちらにも飛んできました。
実は、ちょうど今、1年生の地理で「アフリカ」を授業していて…欧米による植民地支配、独立後の民族対立・内戦からの難民問題(ルワンダの虐殺を例に)を教えたところで…明日、「アパルトヘイト」を授業する予定です。こちらの「記事」を読ませていただき、授業内容を構成しました。ありがとうございました。
さて、中学校という年齢の問題もありますが、教科書記述も人権問題や戦争・内戦・国家間の対立など以前に比べれば詳しく記述されるようになりましたが、それでも歴史背景や要因・影響などは一面的・画一的で表層のみですから生徒の理解も薄いものになります。時間の制約もあるなかで、それでも「事実」と「背景」「影響」はきちんと押さえながら…先で考えるための視点と歴史認識だけは教えていくつもりで…教科書無視の授業をしています。
たとえ中Ⅰとはいえ、整理して教えると理解しますね。感受性の豊かな生徒は「理不尽さ」には気づきます。そして自分ならどうするかを考えます。
歴史では…改訂されては来ましたが、それでも世界史の分野が実に少なく…補いながら(同時代史の視点から)把握させています。正直、世界史を知らずに大学生や大人になる今の子どもがグローバル社会で大丈夫かと心配になりますね。
私にとっても大学受験での「世界史」は全体把握と暗記でした。本格的に学んだのは大学時代、一般教養で「イギリス社会史」の講義で、岩波書店の「講座世界史」のイギリスを読まされてレポートを書いた際に、市民革命の流れに興味を持ち、マックスウェーバーにはまって…一夏で「講座世界史」を全巻読破して…ようやくわかった感じがしました。特にわかりやすかったのは、G・M・ Trevelyan 「ENGLISH SOCIAL HISTORY」でした。(みすず書房から訳書もありますね)
話が逸れましたね。明日は少し熱を入れて「アパルトヘイト」を語りたいと思います。