20位:「天空の城ラピュタ」の裏話
「天空の城ラピュタ」は1986年に公開された作品。空から降ってきた少女シータが持つ飛行石に導かれ、鉱山で働く少年パズーと共に、天空の城ラピュタを目指す物語です。本作の時代設定は、産業革命が起きた19世紀のヨーロッパです。
ラストシーンで、パズーとシータがムスカ大佐に発した「バルス」という破壊の呪文の語源は、トルコ語で平和という意味がある「Bans(バルシュ)」とされます。※ラピュタ語で「閉じよ」という説あり。
バルスは破壊の呪文であり、平和とは矛盾するように見えますが、優れた文明を持つラピュタが崩壊すれば人々の平和は守られます。宮崎駿監督が本作品に込めた想いは、「産業革命に対するアンチテーゼ」と「人間が自然と共存する事の大切さ」です。だからこそ、一見矛盾するバルスの呪文と語源が一致します。
また細かな点では、作品の敵であるムスカ大佐には子孫がいます。それは「未来少年コナン」に登場する悪役「レプカ」です。ただ本編のムスカに妻子がいたのか、ムスカの兄弟の子孫がレプカなのかはわかりません。
この他には、シータとパズーをラピュタ島に連れていく「空中海賊のドーラ一家」。舞台はヨーロッパであるものの、子分の1人は日本人。作中だと「ケ」という人物が該当し、黒色のヒゲ、厨房ではすりこぎを担当しています。
ジブリ側が、細かい部分まで世界観を考えていた事がよくわかりますね。
19位:「火垂るの墓」の裏話
火垂るの墓は、1988年に公開された作品。戦争で両親を失った幼い兄弟がたどる過酷な運命を描いた作品です。本作品は原作を執筆した野坂昭如の体験が元になっています。
公開時のポスターは、清太と節子が草むらの中に分け入り、蛍の乱舞を眺めているというもの。過酷な作品の中で、ポスターだけはほのぼのしたものと思われています。しかしポスターのハイライトを上げると、上空には連合国軍のB29が飛んでいる事がわかります。
そして冒頭で、既に清太と節子は亡くなっています。本作では2人の幽霊が登場し、自分達が亡くなるまでの過程を追体験する構成となっています。監督の高畑勲は「2人の幽霊は、気の毒な事にこの体験を繰り返すしかない。それは非常に不幸な事」と述べました。
また作中、清太は居候するおばさんと喧嘩別れし、節子と2人で暮らす選択肢をします。この選択が節子を死に追いやったと考える人もいます。ただ作中で節子が、有害物質を含む黒煙の雨粒を左目に受ける場面もあり、その影響で節子が亡くなった可能性も捨てきれません。
一部では「清太はクズ」と称されるものの、そもそも戦争さえなければ、2人は生きる事ができていたはず。監督は「清太を糾弾する意見が大勢を占める 時代が来るかもしれず、ぼくはおそろしい気がします」と述べており、その時代は既に訪れているといえます。