鎌倉時代とはどんな時代?特徴や出来事をわかりやすく簡単に紹介

鎌倉時代の文化・経済

質実剛健!中国から新しく伝わった建築

東大寺南大門

鎌倉時代には中国から新しい建築様式が伝えられました。とくに寺院建築の発展が著しく、華美な装飾にこだわった平安時代と異なり、質実剛健ともいえる様式が特徴です。

おもには「大仏様(だいぶつよう)」「禅宗様(ぜんしゅうよう)」「和様(わよう)」にわかれます。

寺院建築のひとつ「大仏様」は中国の南宋で使われていた建築様式で、天井がなく屋根裏が見えるなど構造を露出させて装飾が少なく力強いデザインです。代表的な建物に東大寺南大門があります。

そして、禅宗様は禅宗とともに中国から伝わった建築様式です。床を張らないことや軒の反りが大きく、釣り鐘型の窓などが用いられています。

最後に、和様(わよう)は日本でもともと用いられてきた日本の伝統的な建築様式全般のこと。柱を固定する長押(なげし)を使っていること、天井は低めとなっているのが特徴です。

『平家物語』や『徒然草』などが生まれた文芸

平家物語の冒頭

鎌倉時代の文学は平安時代の雅な物語と異なり、武士の戦いをテーマにした軍記物語が生まれました。とくに平氏の栄枯盛衰を描いた『平家物語』は鎌倉時代を代表する作品で、琵琶法師(びわほうし)が全国に弾き語りをして広まります。

また、和歌では藤原定家が日本三大和歌集のひとつ『新古今和歌集』(しんこきんわかしゅう)を編さんしました。2000首弱の歌を収録し、優雅で耽美的な歌風が特徴です。さらに定家は「小倉百人一首」も成立させました。

そして鎌倉時代の文学として忘れてはならないのが、日本三大随筆のうち鴨長明の『方丈記』と吉田兼好の『徒然草』です。どちらも無常観をテーマとしています。

鎌倉時代に流行った似絵

絵画では『蒙古襲来絵詞』(もうこしゅうらいえことば)のような絵巻物も人気となりました。とくに戦いをテーマにしたものが多かったようです。さらに「似絵」(にせえ)と呼ばれた肖像画のジャンルも生まれました。

新しい仏教宗派が次々と生まれた宗教

浄土宗の祖・法然の生涯を描いた絵巻物

鎌倉時代には戦乱が続いた不安な時代から人々を救うべく、鎌倉新仏教と呼ばれる新しい仏教宗派が次々と生まれました。それらは主に浄土系、日蓮宗、禅宗に分かれ、仏教にも大変革をもたらしました。

これまでの仏教では、修行や功徳を積んだ人しか救われないと考えられていました。しかし新しい浄土教系や日蓮系は厳しい修行を行なわなくても念仏または題目を唱えれば救われると説いて、庶民にも広まったのです。

浄土教系は以下の3つです。

  • 法然(ほうねん)が開いた浄土宗(じょうどしゅう)(開宗は平安末期)
  • 法然の弟子の親鸞(しんらん)が開いた浄土真宗(じょうどしんしゅう)
  • 一遍(いっぺん)が開いた時宗(じしゅう)

これらは多少の違いはありますが、基本は阿弥陀仏を信仰し、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば来世は極楽浄土に生まれ変われると説くもの。なお一遍は阿弥陀仏を信じなくても、ただ「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば往生できると説き、念仏を唱えながら踊る「踊念仏(おどりねんぶつ)」を行ないました。

日蓮は外国の襲来を予言する「立正安国論」を著わし、幕府に提出した

そして、日蓮宗(にちれんしゅう)は日蓮が開いた教えです。「法華経(ほけきょう)」を中心とする教えで、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」とお題目を唱えれば、現世で仏になれると現世利益を説きました。

最後に、禅宗は坐禅を組むことが修行の根本とする宗派で、臨済宗(りんざいしゅう)と曹洞宗(そうとうしゅう)があります。ストイックに坐禅に取り組むスタイルは武士に指示され、幕府にも保護されました。

宋銭の流通と貨幣経済の普及

中国の宋で作られた宋銭

鎌倉時代は経済も大きく発展しました。その特徴は現代につながる銭を使う貨幣経済の普及です。これは銭を大量に用意できたこと、銭を使うシステムの需要と供給のバランスが合致したからでした。

平安時代末期、平清盛が積極的に日宋貿易を行ない輸出超過で宋銭が大量に日本に入ってきたため、日本は銭を自ら作らずとも準備することができました。

一方で、鎌倉時代には同じ土地で麦などを作る二毛作の登場や、肥料や農具の発達により農作物の生産量があがり、余った農作物が出るようになります。また手工業の原材料の生産量も増え、手工業が発達しました。

鎌倉時代には定期市が開かれるようになった

こうした余った農産物や、手工芸品を売るための定期市が各地で開かれるようになります。商売が活発化すると、腐らず価値も変わらない銭が重宝され、貨幣経済が発展しました。

鎌倉時代の暮らし

当時はどんな衣服を着ていた?

武士の直垂

鎌倉時代の服装は平安時代と比べて動きやすさが重視されました。武士の正式な服装は、庶民の服から転じた直垂(ひたたれ)です。襟がまっすぐにさがった直垂は上衣を紐で結び、袴も鎌倉時代の物は足首で結んでいたとされます。腰刀を差し、頭に烏帽子をかぶりました。

女性の壺装束

身分の高い武家の女性は小袖に細い帯をしめ、その上に裾を引く上着の袿(うちぎ)を重ねました。外出時には裾をあげて腰のあたりに紐で結ぶ壺装束。頭には回りにカーテンのような薄い布をたらした市女笠(いちめがさ)をかぶりました。

一方で庶民の男性は小袖と袴、女性も小袖を中心にした服装だったようです。

当時はどんな食事をしていた?

健康食だった鎌倉時代

鎌倉時代の武士は質素ながら健康的な食生活をおくっていました。ごはんの調理法は、つばのついた刃釜が登場し、蒸すから炊くへと発展します。玄米と焼き魚や野菜、梅干しなどのおかずに焼き塩やみそといった調味料を加えたものが中心で、時には狩りをして肉を食べていました。

1日2食でしたが、戦の時は3回以上の食事をとり、戦にもっていくためおにぎりが誕生しました。

一方、庶民の食事は貧しく雑穀を粥にして食べていましたが、飢饉の時にはそれすら口にできず餓死者が多く発生したようです。

鎌倉時代の代表的な人物

源頼朝(みなもとのよりとも 1147~1199)

源頼朝(別人説もあり)

鎌倉幕府初代将軍。壇ノ浦の合戦で平氏を滅亡させると政権を握り、日本初の武家政権となる鎌倉幕府を開き、征夷大将軍となりました。

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北条時政(1138~1215)・義時(1163~1224)

北条時政の木像

北条時政は源頼朝の妻・北条政子の父で、頼朝を挙兵時から支えました。頼朝亡き後は北条氏の勢力を強めました。

また、その子義時は執権としての地位を確立し、名実ともに鎌倉幕府の支配者となりました。

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北条政子(1157~1225)

尼将軍と呼ばれた北条政子

鎌倉幕府初代将軍源頼朝の妻。北条時政の娘。流人時代の源頼朝と結ばれ、その活躍を支えました。頼朝の死後は尼将軍と呼ばれ、北条氏とともに幕府の実権を握ります。

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後鳥羽上皇(1180~1239)

後鳥羽上皇

第82代天皇。鎌倉幕府が権力を固めていくなか、朝廷の復権を試み、幕府に対して承久の乱を起こすも失敗。隠岐に流されました。

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北条時宗(1251~1284)

北条時宗(別人説もあり)

鎌倉幕府第8代執権。2度にわたる元寇を退けた執権として知られています。元からの国書に関しては当初から黙殺。元軍を撃退した文永の役の後、九州沿岸に防塁を築かせ、北条一族を九州に赴任させるなど国防強化に努めます。弘安の役では自ら作戦指示を出して側近を現地に派遣して指揮にあたらせ、元軍を撃退しました。

時宗は国難に当たるために幕府内では得宗の権力の強化につとめ、朝廷に対しても外政でも主導権を握ります。そのため時宗の時代に幕府、執権の権力が頂点を迎えました。

後醍醐天皇(1288~1339)

鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇

第96代の天皇で南朝の初代天皇。鎌倉幕府を倒し建武の新政を行なった天皇です。しかし足利尊氏と対立し建武政権は約3年で崩壊。尊氏らの建てた天皇に反発し、吉野へのがれて南朝をうちたてます。こうして南北朝時代へと突入しました。

【年表付】南北朝時代とは?歴代天皇や武将、文化も分かりやすく解説

日蓮(1222~1282)

蒙古襲来を予言した日蓮

日蓮宗を開いた僧侶。「法華経」こそが人々を現世の苦労から救うことができると確信して教えを広めました。

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藤原定家(1162~1241)

百人一首を作った藤原定家

鎌倉時代初期の代表的な歌人。公家。「小倉百人一首」を編纂し、勅撰和歌集である「新古今和歌集」の編集にも携わりました。

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鎌倉時代がよく分かる関連作品

おすすめ書籍・漫画

鎌倉擾乱

鎌倉初期の「非命に斃る」、中後期の「異形の寵児」、末期の「北条高時の最期」という作品集で、頼家、平頼綱、北条高時とそれぞれ時代の節目の人物を主人公に取り上げています。

狭い鎌倉の中で繰り広げられる権力闘争のすさまじさと恐ろしさには驚かされるでしょう。「異形の寵児」の平頼綱はひ弱さを持ちながらも権力の中枢に上り詰める凄まじい執念が圧巻です。

【24年11月最新】鎌倉時代をよく知れるおすすめ漫画・本ランキングTOP10

おすすめ映像作品

NHK大河ドラマ 時宗

2001年のNHKの大河ドラマ。大河ドラマで初めて鎌倉時代中期をとりあげ、狂言界の和泉元彌が主人公の北条時宗に抜擢されました。天下人であっても緊張を強いられる鎌倉幕府の激しい内部抗争や兄との確執を経て、元寇という国難に果敢に立ち向かう若き時宗の姿が描かれています。

元寇を国際的なスケールのもと描いたダイナミックなドラマで、現在は総集編がDVD化されています。

鎌倉時代に関するまとめ

いかがでしたでしょうか?

鎌倉時代の特徴や武士について、文化や生活、主要人物などをご紹介しました。鎌倉時代は地味な時代ともいわれますが、じつは長く続いてきた朝廷や貴族を中心とした時代から、戦う武士が政権を担う時代へとガラリと様相を変えた時代の転換期です。

政治制度はもちろん、文化や宗教なども大きな変化を遂げました。まさに鎌倉時代は江戸時代まで続く武士の世紀の幕開けとして、ダイナミックに動いた時代だったのです。

そう考えると、とてもワクワクしませんか?この記事を読んで武家政権が初めて時代を動かした鎌倉時代の魅力に気づいてくだされば幸いです。

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