小説ヲタクがおすすめするオールタイムベスト83冊

実話を題材にしたおすすめ映画40選【不朽の名作から最新映画まで】

「実話をもとにした映画で、一度は観ておきたい作品はどれかな?」
「感動する実話映画が観たいな…!」

「事実は小説より奇なり」といいますが、衝撃の事件や奇跡のような実話は、そこから着想を得て作品として映画化されることがよくあります。本当にあった話がベースにあるため、物語にどれも説得力があり、心を動かされる作品が多い、というのが実話映画の特徴です。

また、実話映画は社会問題を考えるきっかけにもなります。ニュースでは事件の表面的な部分しか報道されないことが多いですが、映画ではその背景や逆の立場になった時の心情を描くこともあるため、その事件に対して多面的な物の見方ができるのです。

この記事では、映画好きの筆者が、今まで鑑賞してきた中で印象に残る実話映画を、いくつかのジャンルに分けて40本ご紹介します。最新の映画から古典と呼ばれるような映画まで、年代・制作された国・予算規模を問わずに選んでいますので、きっと気になる一本が見つかるでしょう。

映画賞を受賞した実話映画5選

ブラディ・サンデー ※13+

1972年、アイルランドでデモ行進に参加していた市民に対してイギリス陸軍が発砲、14名が亡くなりました。通称「血の日曜日事件」と呼ばれますが、ポール・グリーングラス監督によって事件を再現する形で映画化されました。2002年ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞しています。

この事件自体が悲しい歴史であることは事実です。しかし1998年、ブレア首相の指示で事件の調査が行われ、この映画制作に繋がりました。2010年、キャメロン首相は政府としての謝罪を表明します。歴史を直視し、受け入れ、次に生かすことこそ、犠牲者への追悼でもあると感じる作品です。

エンドロールで流れるU2の「Sunday Bloody Sunday」は、今も多くのファンに愛されるU2の代表曲です。

フラガール

2006年度キネマ旬報日本映画ベスト1に輝き、2007年度日本アカデミー賞も受賞した、町おこしのためにフラダンスショーにチャレンジした炭鉱の人々の物語です。時代とともに寂れつつあった炭鉱の町を救うという女性たちの強い意志に色んな人が心を動かされ、奇跡のようなフラダンスショーを見せてくれます。

キャスト陣は実際にフランダンスを一から練習に励んだそうで、ラストのショーは圧巻の一言です。日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した蒼井優のソロダンスは、今でもありありと思い出せるほどの素晴らしさで、自信に満ち溢れた笑顔が輝いていました。彼女を支えた先生役の松雪泰子の涙も忘れられません。

それでも夜は明ける ※PG12

2014年度アカデミー賞・ゴールデングローブ賞をダブル受賞したこの作品は、ソロモン・ノーサップという黒人バイオリニストが、ある日突然誘拐・拉致されて奴隷生活を強いられる物語です。ソロモンは12年もの間、奴隷として差別や暴力を受けながらも自らの尊厳を見失うことなく、愛する家族に再会するために闘い続けます。

アメリカの奴隷制度について興味を持つきっかけを与えてくれる映画です。ソロモンは「自由黒人」でしたが、法的にも奴隷ではなく富を築いて生きることのできる自由黒人という人々がいたことも、この映画を通じて知る人が多いかもしれません。重たい内容ですが、鑑賞を勧めたい作品です。

グレイテスト・ショーマン

P・T・バーナムという実在したアメリカの興行師の半生を描いた2017年公開の映画です。2018年ゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞に輝いたことでもわかるように、特にこの映画は、楽曲について高い評価を得ています。

一度聴いたら耳に残って歌い出したくなるミュージカルナンバーを手掛けたのは、傑作「ラ・ラ・ランド」のペア、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールです。そして主役バーナムを、トニー賞でミュージカル主演男優賞の受賞歴があるヒュー・ジャックマンが演じたことで、歌の魅力が倍増しました。

グリーンブック

2019年度アカデミー賞・ゴールデングローブ賞の各賞を席巻したことでも話題になったこの作品は、黒人のジャズピアニストであるドクター・シャーリーと、その運転手として雇われた白人のトニー・リップの、可笑しくも泣けてくる友情の物語です。

人種問題は長年にわたり世界的な課題であり、今もそこに端を発した事件、暴動が絶えません。映画批評家からは称賛の声が上がる一方で、差別を軽く扱いすぎているという声もありました。しかし称賛や非難といった批評の前に、まずはこの映画を観た上で、人種問題を考える時間を持つことからするべきだと思います。

スポーツをテーマにした実話映画5選

炎のランナー

1982年のアカデミー賞を受賞したこの作品は、2人の実在したランナーが1924年のパリオリンピックに出場する話で、スポーツ映画の傑作と評されます。ユダヤ人のハロルドとスコットランド人の牧師エリックという、バックグラウンドが全く違う二人が金メダルを目指すというのが、オリンピックならではの多様性であり、大きな魅力といえます。

この映画を知らなくても、ヴァンゲリスによるテーマ曲は聞いたことがあるという人が多いでしょう。サウンドトラック「Chariots of Fire」は、アメリカのビルボードチャートで4週連続1位に輝きました。ヴァンゲリスはこの楽曲でアカデミー賞作曲賞も受賞しています。

しあわせの隠れ場所

2009年公開の、マイケル・オアーというアメリカンフットボールの選手の物語です。ある家族との偶然の出会いから、彼の人生が大きく変わっていく様が見事に描かれています。アメリカ社会ならではのノーブルな人助けの話で、感動的なスポーツ映画に仕上がっています。

裕福な環境にいる人間が貧しい者に手を差し伸べるという、ある意味優劣があった関係であったものが、交流の中で対等な関係性になり、逆転する場面もあります。金銭的に恵まれている者が見落としがちな心の豊かさを気づかせてくれる点でも、素晴らしい映画でした。

インビクタス・負けざる者たち

南アフリカ共和国大統領ネルソン・マンデラが、スポーツの力を借りて差別をなくそうと、白人がキャプテンを務める同国のラグビーチームと共に、ラグビーW杯優勝を目指す物語です。2019年のラグビーW杯で大健闘した日本のラグビーチームがもたらした社会的影響を思い出せば、この映画が訴えるスポーツの力の偉大さをより一層感じられます。

ネルソン・マンデラの民族融和を目指す考え方は、憎しみ合うのではなく赦すことを大切にしていたことが痛いほど伝わってきました。民族対立や人種差別問題は、正面から取り組むのは難しくとも、スポーツなど別の側面から捉えれば解決の糸口が見つかるかもしれないという示唆も含め、この映画は差別問題を考えるにも最適な作品でしょう。

バンクーバーの朝日

戦前カナダに渡った日系人が、移民というだけでいわれ無い差別を受ける日々の中、「バンクーバー朝日」という野球チームを作り、それを希望の光として踠きながらも懸命に生きようとした人々の話です。2014年に公開され、埋もれた史実を掘り起こした映画としても話題になりました。

背景に太平洋戦争があるため、暗い話になりそうなところを、野球がテーマにあることもあって後味がすっきりした作品です。錚々たるキャストが名を連ねていましたが、誰もが役に生き、悪目立ちしていないところが素晴らしく、石井裕也監督がイメージする世界観を、スタッフもキャストも共有して作りあげられた映画だったのだろうと思いました。

フォードvsフェラーリ

2019年に公開され、気分がスカッとする熱いドラマとして絶賛の嵐を巻き起こした本作は、ル・マン24時間耐久レースで勝利するために闘ったフォードの男たちの物語です。1966年当時、ル・マンではフェラーリが当然の如く勝者と考えられていました。そこで車の開発を重ね、優秀ドライバーを獲得することでフェラーリに勝とうとします。

カーデザイナーのシェルビー役をマット・デイモンが、カーレーサーのマイルズをクリスチャンベールが演じていますが、二人の絆が眩しいほどで、見ていてワクワクします。レースシーンはぜひ大画面で観て、臨場感を堪能して欲しいです。

戦争をテーマにした実話映画5選

アルジェの戦い

1966年、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したこの作品は、ドキュメンタリー作品を数多く手掛けていたジッロ・ポンテコルヴォ監督が、アルジェリア戦争を描くために一般民衆を主軸にまとめた映画です。モノクロの画面で見る映像の衝撃度は半端なく、今でもこの映画がテロ対策の参考に使われているというのもよくわかります。

これはアルジェリアがフランスから独立を勝ち取ろうとした話ですが、似たようなことは世界中あちこちで今も起きていることを忘れてはいけません。決して過去の話ではなく、民族独立を願ってテロが起き、報復され、泥沼化している問題解決の緒としても、この映画を多くの人に見て欲しいと思います。

東京裁判

1983年に作られたこの映画は、アメリカ国防総省に保管されていた極東国際軍事裁判の様子を記録していた映像に、日中戦争や太平洋戦争中の記録映像を交えて小林正樹監督が編集した277分という長尺の作品です。

東条英機やダグラス・マッカーサーなど、歴史上の人物たちが話す姿を見られるだけでも大変貴重で、歴史が文字の上だけではない、実際に起きたことだということを再認識させられます。そして、戦勝国が裁きを下すこの裁判自体に意義があるのかという問いかけには、誰もがハッとさせられるでしょう。

白バラの祈り – ゾフィー・ショル、最期の日々 – ※13+

1943年、ヒトラーの政策に対して声を上げ、尋問を受けるもたった6日間で処刑された、ゾフィー・ショルという白いバラ抵抗運動をした女性の物語です。第二次世界大戦中に、この戦争はおかしいと21歳の若さで活動していた女性がいたことにも驚きますし、その命を顧みない勇気と覚悟には感嘆せざるを得ません。

戦争映画というと銃弾が飛び交うシーンを連想しますが、このように非暴力的に権力と闘っていた人もいたことにもぜひ目を向けたいと思いました。2005年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞・女優賞)を受賞しています。

戦場のピアニスト

ウワディスワフ・シュピルマンという実在したピアニストが、ユダヤ系ポーランド人であったことでゲットーに強制移住させられるも、奇跡的に生き延びていました。しかしある日ドイツ人の将校に見つかってしまい、ショパンの一曲を演奏することで運命の歯車が動き出すという物語です。2002年カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しました。

シュピルマンの視点を中心にしているため、他のホロコーストを描いた戦争映画よりもソフトな印象を受けます。ただ一方で、シュピルマンのピアノの天賦の才能を守ろうと手を差し伸べた人々が尽く命を落としていく点には、芸術の偉大さと共に残酷さも覚えます。それを彼自身が実感しているからこそ、シュピルマンの演奏を聴くと涙が止まらないのかもしれません。

杉原千畝

2015年に公開されたこの映画は、第二次世界大戦中にリトアニアに外交官として赴任していた杉原千畝が主人公です。6000人のユダヤ人をナチスの迫害から守るため、日本通過ビザを日本政府に無許可で発給する決断をしました。チェリン・グラック監督のもと、唐沢寿明が杉原千畝を演じています。

杉原千畝については先に海外で評価する声が高まり、日本ではようやく2000年に名誉回復が成っています。信じられないような話ですが、それほどまでに日本では知られていなかった杉原千畝の功績を伝える映画としても、この作品はお勧めしたいです。

感動して泣いてしまう実話映画4選

遠い空の向こうに ※PG12

将来は炭鉱夫として働くことが当たり前になっている街で、打ち上げられたソ連の人工衛星スプートニクを見たことがきっかけで、ロケット製作に夢中になる高校生たちの物語です。父親や教育者たちと衝突しつつも、それでも夢を諦めたくないという少年たちの真っ直ぐな情熱には心を動かされます。

鑑賞者からは尽く高評価の映画ですが、あまり有名ではないのが意外です。将来のことで悩める中高校生にもぜひ見て欲しいですし、PG12作品なので、親子での鑑賞もお勧めします。

ちなみに、この作品の原作名は「Rocket Boys」でしたが、映画は子供向け作品と思われないように、これをアナグラムにして「October Sky」という題にしています。スプートニク1号の打ち上げが10月だったので、とてもいい改題だったと思います。

ブタがいた教室

小学生がクラスでブタを飼い、1年後に食べるという約束で育てていく日々を描いた物語です。飼っていくうちに子供たちの中でブタがクラスの一員として自覚されるようになり、1年後には約束通り本当に食べるのかどうかで議論になります。

ブタをどうするのかという決断を下すために何度も議論を重ねますが、その時の子供たちの流す涙が見ていて辛いです。こんな悩ませる問題を小学生に与えて良かったのかと苦悩する担任教師を好演する妻夫木聡が印象的でした。しかしラストシーンの子供たちの表情を見て、これほど命の重さを考えさせる素晴らしい授業は滅多にないとも感じました。

聖の青春

難病と闘いながらも将棋を指すことに拘り続けた、村山聖という将棋棋士の物語です。将棋のため、命をも顧みず努力し続ける村山聖という人間の生き方を見ているだけで泣けてきます。自分はこんなに一生懸命生きているだろうかと考えさせられます。

病を得たからこそ出会った将棋でもあり、運命の皮肉も感じる一方で、村山聖にとってはもちろん、日本の将棋界においても、村山聖が将棋に出会えたことは何よりの幸せであった気がします。

村山聖を演じた松山ケンイチと、羽生善治を演じた東出昌大の徹底した役作りも大きな話題になりました。

8年越しの花嫁

結婚を約束していた恋人が、ある日突然難病に侵され、将来が全く見えなくなるも、悩み抜いた末に恋人を支え続けたことで奇跡を起こした物語です。岡田惠和が脚本を担当し、瀬々敬久が監督を務め、濃い人間ドラマとなりました。

闘病中の女性の難しい身体表現を土屋太鳳が、献身的な愛を注ぎ続けた男性を佐藤健が、体当たりという表現に相応しい演技で魅せたことで、「とにかく泣ける映画」と大きな評判となり、興行的にも2017年の大ヒット映画となりました。

社会問題を取り上げた実話映画4選

誰も知らない

是枝裕和監督が、1988年に発覚した巣鴨子供置き去り事件をベースに脚本を書き上げた映画です。初めて観たときには、こんな話は信じられないと思いつつも、映画にのめり込んでいく自分がいました。ネグレクトの問題は今も社会問題になっていますが、何をどこに手を差し伸べれば最善なのか、難しいと感じます。

2004年カンヌ国際映画祭に出品され、柳楽優弥は男優賞を受賞しました。ポスターにもなっていた、柳楽優弥の少年から青年への成長過程で見せる挑むような目が印象的で、実際に是枝裕和監督もオーディションで彼の目の表情が気に入って選んだと話しています。今後の活躍も楽しみな柳楽優弥の俳優人生最初の作品としても興味深い映画です。

それでもボクはやってない

実際に起きた痴漢冤罪事件を元に、周防正行監督が取材し脚本を書き上げ、映像化しました。日本の裁判制度について考えるきっかけになる作品として、教育現場でも扱われることも多く、色々なことを考えさせられる映画です。

痴漢行為を疑われる男を演じた加瀬亮が苦悩する姿は、観ていていたたまれず、決して他人事ではなく、自分の身にも起きる可能性がある事件だと痛感させられました。裁判をテーマにした映画は他にもありますが、脇役のキャスト陣の演技もリアリティが半端なく、法曹界で働く人たちにも評価が高いという点でも特異な作品です。

最強のふたり ※PG12

事故によって首から下が麻痺してしまったフィリップという大富豪の男と、刑務所を出て介護者として雇われた黒人の青年ドリスとの友情の物語です。2011年に公開され、東京国際映画祭で東京サクラグランプリ(最優秀作品賞)に選ばれただけでなく、フランス映画としては日本で最大のヒット作になりました。

フランスにおける社会問題をテーマにしていますが、金持ちかどうか、健全な肉体を持っているかどうか、肌の色が何色か、そういった区別を取っ払って本音で生きるふたりはとにかく素敵です。笑えるシーンも多いのですが、ラストには涙が止まらない映画でした。

黒い司法 0%からの奇跡

ブライアン・スティーブンソンという、貧困にあえぐ人々を救い、黒人への偏見と闘うアメリカの弁護士を取り上げた映画です。冤罪で死刑判決を受けている黒人の被告人を助けるために活動しますが、あらゆる困難が行く手を阻みます。アメリカ社会における人種差別問題の根深さを感じる作品です。

どこまでも真っ直ぐに突き進むブライアンを、マイケル・B・ジョーダンが透明感溢れる演技で魅せてくれます。正しく生きるという王道を進むことに背中を押してくれる、素敵な映画です。

2020年2月28日に劇場公開されました。

有名な事件をテーマにした実話映画5選

戦艦ポチョムキン

映画史上に輝くクラシック作品として、数々のオマージュを捧げられたことのあるこの作品は、1905年、第一次ロシア革命の最中に起きた、黒海艦隊の戦艦ポチョムキンの乗組員による反乱を描いた映画です。ロシアはまだ日露戦争を続けるつもりでしたが、この事件をきっかけに断念することになりました。

サイレント映画ですが、映像と音楽だけでグイグイと世界観に引き込まれます。有名な「オデッサの階段」のシーンは、手に汗が滲むほどの緊迫感です。セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監督はこの作品でモンタージュ理論を確立したとされ、これ以後の映画界に多大な影響をもたらしました。

マネー・ショート 華麗なる大逆転

リーマンショックを見抜き、経済破綻が起きることを予見してCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という取引を使い、巨額の利益を得た4人の個性的なトレーダーたちを描いた物語です。クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、スティーブ・カレル、ブラッド・ピットという豪華なキャスト陣も注目を集めました。

難しい金融用語もたくさん出てきますが、リーマンショックの裏で何が起きていたのかを知るにはとても良い映画です。聴き慣れない言葉が多くてストーリーに置いていかれそうになったら、まずは吹き替えでチャレンジしてみてください。俳優陣の、レベルの高い演技合戦も見ものです。

日本で一番悪い奴ら ※R15+

2002年に起きた稲葉事件をモチーフにした映画です。諸星という警察官が「正義のため」裏社会と繋がりを持つものの、エスカレートして徐々に悪事に手を染めていく様を、主演の綾野剛が圧倒的な熱量で演じ、後半は特に目を離せないシーンの連続でした。

白石和彌監督は、諸星は結果的に間違った方向に進んでしまったけれども、自分は良かれと思ってその時々の判断を下していたわけで、その瞬間を生きる真摯さを大切にしようという話をした上で撮影していたそうです。確かに、映画の中の諸星はとにかく楽しそうで、悲しい結末なのに笑えてしまうという不思議な作品でした。

タクシー運転手 約束は海を越えて

1980年、韓国で起きた光州事件の取材をしたいドイツ人記者と、その記者を厳戒態勢の光州へタクシーに乗せて行く運転手の物語です。光州事件は韓国の近代史を語る上で欠かせない事件ですが、この映画が高く評価されたことで、多くの人が関心を持つきっかけになりました。

ソン・ガンホという韓国の国民的俳優と、数多くの戦争映画に出演経験があるドイツの俳優トーマス・クレッチマンが共演したことでも注目を集めました。また、光州事件を正面から扱わず、ドイツ人記者とタクシー運転手の掛け合いを軸にストーリー展開していることが、映画の敷居を低くして幅広い観客層を呼んだように思います。

Fukushima 50

2011年東日本大震災で起きた大津波が福島第一原子力発電所を襲い、メルトダウンの危機に直面します。その時に原発内にいて、まさに「命がけ」で戦い続けた作業員50人を中心にした物語です。

東日本大震災からまだ9年しか経っておらず、いまだ故郷に帰れないでいる人がいる上、原発問題を扱うこともあり気を遣うテーマではありますが、主演に佐藤浩市、共演に渡辺謙を迎え、若松節朗がメガホンを取ったことでメジャー級の映画になり、多くの人が観る機会を得られたことが素晴らしいと思います。

2020年3月6日より劇場公開しています。

実話に基づいたサスペンス映画5選

ユナイテッド93 ※R18+

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件で、ハイジャックされた飛行機の中で唯一目的に到達しなかったユナイテッド93便を描いた映画です。テロリスト、乗客、乗組員、航空管制センターや米軍基地の人々の様子が時間経過と共に淡々と映し出されます。

乗員乗客全員が命を落としてしまったため、関係者への徹底した取材を元にストーリーが作られました。航空業界で働いた経験のある人や無名の俳優を起用することで、この事件の重みをさらに強く印象付けています。エンディングで真っ黒になる画面が、ユナイテッド93便に乗っていた全ての人の命の終わりを告げられたようで、何も写っていないのに涙が止まりませんでした。

レクイエム ミカエラの肖像

アンネリーゼ・ミシェルという女性が意識障害を患い、苦しみ抜いた挙句、悪魔祓いの儀式(エクソシズム)を受けることで救いを求めるも、栄養失調になり命を落としました。これは40年ほど前に実際に起きた事件で、ドイツ映画界期待の若手監督であるハンス=クリスティアン・シュミットが手掛けた作品です。

信仰心が厚かったからこその悲劇だと思います。殉教した聖者への憧れがさらに彼女を死へと導いてしまったかと思うと、観ていて苦しくなりました。ミシェルを演じたサンドラ・フラーは、精神的に不安定で難しい役どころを丁寧に演じきり、2006年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞ししています。

チェンジリング ※PG12

ゴードン・ノースコット事件という、1920年代にロサンゼルスで起きた誘拐殺人事件を元にした映画です。行方不明になった息子が警察によって連れ戻されるも実の子ではなく、それに気づいた母親は独自に息子を探そうと闘い続けます。

クリント・イーストウッドはこの作品を監督するにあたり、実話があまりにも複雑怪奇であるため、J・マイケル・ストラジンスキーが事件を綿密に調べ上げて書き上げた脚本に手を加えることなく、映像化に踏み切ったそうです。

完成した作品は、母の子供に対する偉大なる愛に心動かされる物語となり、母親役を熱演したアンジェリーナ・ジョリーは、2009年度アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされました。

セッション

世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞し、話題になったこの作品は、ジャズドラマーになろうと夢を追いかける青年と、その大学の教師との闘いのようなレッスンの日々を収めた映画です。ストーリーは監督であるデイミアン・チャゼルの実体験をベースにしているとのことですが、信じ難いほど凄まじい指導風景が続きます。

賛否両論ある映画です。しかし一流のプロになるために、指導者はもちろん、教えを乞う側の人間も、何もかも投げ出すぐらいの覚悟を決め、立ち向かっていく強い精神が必要だというのは納得がいきます。

デイミアン・チャゼルは「ラ・ラ・ランド」で史上最年少でのアカデミー監督賞を受賞しますが、その裏には彼のひたむきな努力と熱意があったのでしょうし、この映画でその片鱗を感じました。

スノーデン ※PG12

アメリカ国家安全保障局(NSA)の職員であったエドワード・スノーデンが、アメリカ政府による個人情報監視の実態をなぜ暴露することになったのか?という実話に基づいたストーリーです。そもそも世界中の人々が、アメリカ政府によってメールやSNS、個人情報を全てチェックされているということ自体、恐ろしい話です。

スノーデンが自分の仕事に対して疑問を抱いていく過程は見ていて苦しいのですが、この作品がエンターテインメントとして成立するようにラブストーリーや青春ものの要素を入れ込んでいるあたりは、監督オリバー・ストーンのバランス感覚の良さを感じます。

実話に基づいたホラー映画2選

地下水道

第二次世界大戦中ドイツ軍に占拠されたポーランドのワルシャワ市街へ入るため、地下水道へ入ったパルチザン部隊のゲリラ戦を描いた映画です。監督の実体験も折り込まれた描写とのことでしたが、直視しづらいシーンも多く、ワルシャワ蜂起の悲劇性が重くのしかかります。

この作品は1957年にカンヌ国際映画祭特別審査員賞を受賞し、アンジェイ・ワイダ監督の名が知られるきっかけにもなりました。ワイダが31歳の時の作品でしたが、光と影を巧みに利用した演出方法が注目され、ホラー映画の撮影技法としてこれ以降のホラー系作品に大きな影響を与えた映画としても知られます。

冷たい熱帯魚 ※R18+

1993年に起きた埼玉愛犬家連続殺人事件をモチーフに制作されました。実際の事件もかなり異様なものであり、多少フィクションが入っているとはいえ、信じ難いストーリーでした。狂った殺人者の役を演じたでんでんの演技が圧巻で、2012年日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞しています。

園子温監督の他の作品を知っている人なら、どぎついシーンもそこまで抵抗はないかもしれませんが、初見の場合はある程度覚悟して観た方がいいかもしれません。ありとあらゆるエグいシーンを観続けると一周回ってなぜか笑ってしまうような、そんな感覚に襲われる園子温監督作品らしいラストだと感じました。

これから公開予定の注目実話映画5選

MOTHER マザー

実際に起きた少年による祖父母殺害事件から着想を得て、大森立嗣監督が映画化した作品です。シングルマザーとその息子との歪んだ親子関係を描いたもので、母親役を長澤まさみが演じ、息子役にはオーディションで選ばれた新人の奥平大兼が抜擢されました。

どんな親と子供であっても、そこには二人だけの愛情関係があるものです。この映画の親子はそれが間違った方向へいってしまったがために悲劇が起きてしまったのでしょう。「毒親」については社会問題にもなっていますが、この映画を通して考えてみるのもいいかもしれません。

2020年7月3日に劇場公開予定です。

薬の神じゃない!

この映画は、中国で2014年に起こった「陸勇事件」というニセ薬事件を元に作られました。貧しさから高価な薬が買えず、ジェネリック薬を密売してほしいと持ちかけられ、警察に追われながらも密売を拡大していく先には何が起きたのか、映画でぜひ観て欲しいと思います。

中国では2018年に公開されましたが、興行収入500億という大ヒット映画になりました。映画作品としても評価が高く、国内外の映画賞を多数受賞しています。2020年10月に日本公開予定です。

ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜

1998年長野オリンピック、スキージャンプ・ラージヒル団体で金メダルに輝いた栄光の影にいた、25人のテストジャンパーたちの物語です。テストジャンパーは惜しくも選手に選ばれなかった人たちで、大会で選手が安全に飛べるかどうかを実際に飛行して証明してみせることを仕事にしています。

長野オリンピックでテストジャンパーたちが何をしていたのか、あの金メダルはどうやって掴み取ることができたのか、この映画で語られる真実をぜひ観てみたいと思います。そして田中圭をはじめ、山田裕貴、眞栄田郷敦、土屋太鳳、古田新太と、熱量の高い役者陣が揃っていることも楽しみです。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、公開日未定となっています。

オフィシャル・シークレット

2003年、イラク戦争の開戦前に起きた「キャサリン・ガン事件」を映画化した作品です。イギリスGCHQの職員であったキャサリン・ガンが、NSAからのメールをリークしたことで政府に告発された事件です。21世紀の事件ですが、日本ではほとんど報道されず、知らない人も多いのではないでしょうか?

イラク戦争を止めようと立ち上がった誇り高き女性、キャサリン・ガンを演じたのはキーラ・ナイトレイです。自身もキャサリンのことはほとんど知らなかったそうですが、これは多くの人に知ってもらうべき話だと思い、引き受けたそうです。予告編からは、彼女の女優としての覚悟も感じられます。

新型コロナウイルス感染拡大のため、公開延期になっています。

HOKUSAI

葛飾北斎が絵師としてどうやって生まれたのか、柳楽優弥主演で作られた映画です。葛飾北斎といえば「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」で描いた「波」が世界的にも有名ですが、その「波」が絵の中で生まれた瞬間も描かれます。

葛飾北斎の老年期を田中泯が演じるのも楽しみですが、北斎に多大な影響を与える柳亭種彦には永山瑛太が、喜多川歌麿には玉木宏がキャスティングされ、阿部寛は北斎を支える蔦屋重三郎役に抜擢されました。脂の乗った俳優陣の演技合戦も見どころでしょう。

2021年公開予定です。

実話映画に関するまとめ

これはぜひ観てみよう!と思った作品はありましたか?

実話映画の面白さは、実際に起きた事件を監督や俳優がどう切り取るかという点にあります。

どれだけ凄惨な事件でも、そのどこかに共感できるものを見出してそれを映画として成立させられたなら、それはただ酷い事件というだけではなく、悲しい人間の性に同情する思いや、救いとなる一筋の光が見えてくるものです。そしてそれは、これからを生きる私たちへの助言や戒めになるでしょう。

2020年以降も魅力的な実話映画が多数制作され、公開を待っています。映画という芸術として楽しむことはもちろん、生きる上での糧をも得ることができる実話映画を、これからもぜひたくさん堪能してください。

コメントを残す