実話に基づいたサスペンス映画5選
ユナイテッド93 ※R18+
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件で、ハイジャックされた飛行機の中で唯一目的に到達しなかったユナイテッド93便を描いた映画です。テロリスト、乗客、乗組員、航空管制センターや米軍基地の人々の様子が時間経過と共に淡々と映し出されます。
乗員乗客全員が命を落としてしまったため、関係者への徹底した取材を元にストーリーが作られました。航空業界で働いた経験のある人や無名の俳優を起用することで、この事件の重みをさらに強く印象付けています。エンディングで真っ黒になる画面が、ユナイテッド93便に乗っていた全ての人の命の終わりを告げられたようで、何も写っていないのに涙が止まりませんでした。
レクイエム ミカエラの肖像
アンネリーゼ・ミシェルという女性が意識障害を患い、苦しみ抜いた挙句、悪魔祓いの儀式(エクソシズム)を受けることで救いを求めるも、栄養失調になり命を落としました。これは40年ほど前に実際に起きた事件で、ドイツ映画界期待の若手監督であるハンス=クリスティアン・シュミットが手掛けた作品です。
信仰心が厚かったからこその悲劇だと思います。殉教した聖者への憧れがさらに彼女を死へと導いてしまったかと思うと、観ていて苦しくなりました。ミシェルを演じたサンドラ・フラーは、精神的に不安定で難しい役どころを丁寧に演じきり、2006年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞ししています。
チェンジリング ※PG12
ゴードン・ノースコット事件という、1920年代にロサンゼルスで起きた誘拐殺人事件を元にした映画です。行方不明になった息子が警察によって連れ戻されるも実の子ではなく、それに気づいた母親は独自に息子を探そうと闘い続けます。
クリント・イーストウッドはこの作品を監督するにあたり、実話があまりにも複雑怪奇であるため、J・マイケル・ストラジンスキーが事件を綿密に調べ上げて書き上げた脚本に手を加えることなく、映像化に踏み切ったそうです。
完成した作品は、母の子供に対する偉大なる愛に心動かされる物語となり、母親役を熱演したアンジェリーナ・ジョリーは、2009年度アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされました。
セッション
世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞し、話題になったこの作品は、ジャズドラマーになろうと夢を追いかける青年と、その大学の教師との闘いのようなレッスンの日々を収めた映画です。ストーリーは監督であるデイミアン・チャゼルの実体験をベースにしているとのことですが、信じ難いほど凄まじい指導風景が続きます。
賛否両論ある映画です。しかし一流のプロになるために、指導者はもちろん、教えを乞う側の人間も、何もかも投げ出すぐらいの覚悟を決め、立ち向かっていく強い精神が必要だというのは納得がいきます。
デイミアン・チャゼルは「ラ・ラ・ランド」で史上最年少でのアカデミー監督賞を受賞しますが、その裏には彼のひたむきな努力と熱意があったのでしょうし、この映画でその片鱗を感じました。
スノーデン ※PG12
アメリカ国家安全保障局(NSA)の職員であったエドワード・スノーデンが、アメリカ政府による個人情報監視の実態をなぜ暴露することになったのか?という実話に基づいたストーリーです。そもそも世界中の人々が、アメリカ政府によってメールやSNS、個人情報を全てチェックされているということ自体、恐ろしい話です。
スノーデンが自分の仕事に対して疑問を抱いていく過程は見ていて苦しいのですが、この作品がエンターテインメントとして成立するようにラブストーリーや青春ものの要素を入れ込んでいるあたりは、監督オリバー・ストーンのバランス感覚の良さを感じます。