“旅に出た気分に浸りたい”ときに読みたい旅がテーマの小説5選
深夜特急
読んでみて
「旅の小説といえば?」で真っ先に名前が挙がるのが沢木耕太郎の『深夜特急』シリーズです。若き日の沢木自身の体験がもとになったこの小説は、発売当初バックパッカーたちの間でバイブルのようになりました。日本で80年代、90年代に1人旅が流行したのはこの作品が一端といわれています。
「インドのデリーからイギリス・ロンドンまで路線バスだけで行こう!」と思い立って主人公の「私」は日本を旅立ちます。日本からデリーまでも直行ではなく、香港とバンコクでストップオーバーしさまざまな出会いや事件を体験します。この作品を現代の私たちがガイドブックとして使うにはあまりに事情が変わりましたが、1970年代の異国の空気感を体験できてタイムトラベルまで果たせてしまう、旅行好きなら誰もがワクワクする作品です。
みんなのレビュー
読むと旅に出たくなる本だという書評をときおり見ていて、読みたかった本でした。読みはじめは海外は怖いという印象から抜けれないまま読んでいましたが、読み進めるにつれなんだかうらやましくなってきている自分がいました。
引用元:読書メーター
ドナウの旅人
読んでみて
宮本輝の『ドナウの旅人』は、ドナウ川に沿って西ドイツからルーマニアまで旅する2組の男女の物語です。宮本はこの作品の執筆のため実際にドナウ川流域を旅していて、そのときの手記「異国の窓から」も発表されています。
主人公の母・絹子は「ドナウを旅したい」という置手紙を娘の麻沙子に残し、夫を捨てて17歳年下の愛人・道雄と西ドイツに向かいます。母を追ってドイツへやってきた麻沙子は自分のかつての恋人・シギィと再会し、母とその愛人も見つけて4人でドナウ川を下る旅をすることになりました。あらすじだけ説明すると頭に疑問がたくさん浮かんでしまうのですが、宮本の美しい文体で描かれるドナウ川流域の情景と登場人物たちの心情の変化に、読み終えた後は深い満足感が残ります。
みんなのレビュー
何度目の再読だろう。はじめて読んだのは学生の頃。あれから、東西ドイツは統一され、ソヴィエトは崩壊し、ユーゴスラビアは解体した。でも麻沙子たちが、その流れに沿って旅したドナウ河は、今も変わらず滔々と流れている。歴史や人の運命は『もし』ではなく『なぜ』で考えるべき。
引用元:読書メーター
夏子の冒険
読んでみて
『金閣寺』『潮騒』など耽美的な名作を残し、衝撃的な最期を遂げた三島由紀夫。ここでご紹介する『夏子の冒険』は、三島の作品のなかでもコミカルな要素が強くて読みやすく、初めて近代文学や三島作品に触れる人にはうってつけの小説です。村上春樹の『羊をめぐる冒険』にも影響を与えたといわれています。
良家の娘で美しい20歳の主人公・夏子は平凡な男しかいない浮世に嫌気がさし、北海道の修道院に入ると言い始めます。函館へと向かう船内で夏子は猟銃を抱えた青年・毅と出会い、彼の目的についていくと言いはじめ…わがままで頑固なお嬢さまが周りを振り回しながら旅をする様子は思わず笑えてきます。ヒロインの魅力が存分に発揮されている小説です。
みんなのレビュー
確かに、裏の粗筋だけではこんなことになるとは思わなかった。すごく軽い読み心地のコメディぽさもある物語。有名作だけ読んで「三島由紀夫はよくわからん!」と思っている人に一度手に取ってもらいたい。
引用元:読書メーター
オン・ザ・ロード
読んでみて
『オン・ザ・ロード』はジャック・ケルアックが自分の放浪体験をもとに書き上げた自伝的小説です。主人公のサル・パラダイスが1940年代から50年代のアメリカを自由に放浪する姿は、世界中の旅人たちに影響を与えました。特にヒッピーたちには熱狂的に受け入れられ、カウンターカルチャーにも大きな影響を与えています。
この物語はサル・パラダイス(=ケルアック)が主人公なのですが、彼とともに旅をするディーン・モリアーティもとても魅力あふれる人物です。ディーンはケルアックと同じようにアメリカ文学界で異彩を放っていたグループ「ビート・ジェネレーション」を率いていたニール・キャサディがモデルとなっています。ディーン(=キャサディ)の奇想天外な発想とこちらが思わず驚くほどの行動力は、私たちをこの物語にどんどん引き込んでいく力をもっています。
みんなのレビュー
訳者もすごいが、疾走感、休ませる暇も与えないノリのいい文章。ところどころに出てくる旅先でのジャズ演奏のシーン、音楽、飛び散る汗、熱気、すべてが伝わってくる。アメリカ人さえも知らないアメリカという国。なんてばかでかい国なんだ!想像力をかきたてられる文とともに、自分も旅しているような気持ちになる。
引用元:読書メーター
アルケミスト 夢を旅した少年
読んでみて
パウロ・コエーリョの『アルケミスト 夢を旅した少年』は、世界中で3000万部も売れた大ベストセラー作品です。コエーリョはブラジルの小説家で、この作品が第2作目となります。シンプルで美しい文章は、おとぎ話のようなストーリーからは想像がつかないほど哲学に満ちています。
スペインの羊飼いの少年・サンチャゴが、ある日王様と出会ったことから物語は始まります。王様と出会ったことでサンチャゴはピラミッドにあるという宝物を探しに行くことを決意し、旅に出ます。作品中で何度も語られる「本当に何かを望めば、宇宙はお前に味方してくれる」という哲学が徐々に胸にしみてきて、読み終わった後は前向きになれる小説です。