“ほっこりしたいとき”に優しい世界観の小説3選
東京バンドワゴン
読んでみて
小路幸也の『東京バンドワゴン』シリーズは、下町にある老舗古書店「東京バンドワゴン」を営む堀田家が、舞い込んでくる謎を人情味あふれる方法で解決していく小説です。連作短編集になっていてどこから読んでも面白く読めますが、1冊で四季がめぐるようになっているので1巻目『東京バンドワゴン』を試しに読んでみるのがおすすめです。
堀田家は4世帯家族で人数も多く、昭和の時代のホームドラマを思い起こさせます。大家族が食卓を囲む朝食のシーンなど楽しそうで思わず憧れてしまいます。2013年には亀梨和也主演でテレビドラマにもなりましたが、このシリーズの公式サイトにある書店員が考えた「勝手にキャスティング!」も面白いです。
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マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ
読んでみて
悩みを抱えているとき、どこかに今までと違った自分の居場所があったらいいな、と考えることはありませんか?古内一絵の『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』は、そんなときにそっと背中を押してくれるカフェの店長が主人公の小説です。
この店長のシャール、元エリートのイケメンなのですが今はなんとドラァグクイーン。強烈なキャラクターですが野菜をたくさん使った料理は滋味深く優しい味、心が疲れてしまったときには嬉しいですよね。とにかく癒されたい、優しさがほしい…そんなときに特におすすめの作品です。
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流しのしたの骨
読んでみて
江國香織の『流しのしたの骨』は1996年に出版された小説です。タイトルだけ見ると何かおどろおどろしい物語が展開されていそうな感じがしますが、6人家族である宮坂家の半年間のストーリーが穏やかな筆致で描かれています。
物語は19歳の三女・こと子の視点で進んでいきます。穏やかだけど頑固なところのある長女・そよ、奇妙なことばかりするけれど優しい次女・しま子、「私たちの小さな弟」の律の4姉弟と、詩人の母、真面目な父の6人家族の物語は、ちょっと変わったところもあるけれど穏やかで、読んでいて心が安らぎます。読み終わった後は宮坂家のことも、自分の家族のことも愛おしく思えます。
みんなのレビュー
昔から守られているルールと新しく起こるさまざまな事件。家族だからわかること、家族でもわからないこと、わかっているけど見ないふりをすること、そんな絶妙な距離感。変わっていくものと変わらないものの狭間でゆるく揺れながらも、家族の中のみに流れる濃密な空気。全てがいいなあと思ってしまう。
引用元:読書メーター