小説ヲタクがおすすめするオールタイムベスト83冊【ジャンルや感情、気分別に紹介】

“非日常の世界にトリップしたい”ときにおすすめファンタジー小説7選

家守綺譚

読んでみて

梨木香歩の『家守綺譚』は、今から100年ほど前の日本を舞台に妖怪や神様がたくさん登場する和製ファンタジーの連作短編集です。短編といっても1章の長さは文庫本で10ページないほどの短いものなので、小説を読みなれていない人にもおすすめできます。

亡くなった友人の実家を管理することになった新米作家・綿貫征四郎。庭付き2階建ての一軒家は床の間から亡き友の訪問があり、庭のサルスベリには惚れられ、近所を歩けばタヌキに化かされ…もしかしたら昔はこのように自然や精霊・神々、そして人間の距離が近かったのではないか、と思わされます。

妖怪や精霊の存在を当たり前に感じられる登場人物たちが、私たち現代人よりも地に足をつけているように見えるのが不思議です。

みんなのレビュー

狐笛のかなた

読んでみて

上橋菜穂子の『狐笛のかなた』は、先ほどご紹介した『家守綺譚』よりもかなり前の日本を舞台にしたファンタジーです。ファンタジーといえば「魔法」「魔女」などどこかヨーロッパ的なものを連想し、この作品のような世界観にははまりにくい人も多いかと思います。けれども1度はまると和製ファンタジーの世界はたまらない魅力をもっています。

主人公は人の心の声が聞こえる「聞き耳」の能力をもつ12歳の少女・小夜。彼女が助けた子ぎつねは、この世と神の世の「あわい」に棲む霊狐・野火でした。やがて小夜と野火は、隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていき…ファンタジーでありながらこの作品には確かに愛が描かれていて、ラストには思わず涙がこぼれます。

みんなのレビュー

深い愛を感じる物語だった。人と人外のもの、己の意思とは関係なく敵となってしまったもの、本来なら結ばれるはずのない恋なんだろう。それを知っても、疑われてもなお、ただまっすぐに小夜を想い、守りたいと願う野火の気持ちが胸を打った。

引用元:読書メーター

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

読んでみて

世界中で最も読まれている日本人作家ともいわれる村上春樹。彼が1985年に書き下ろしで発表したのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』です。海外でも20か国語以上に翻訳されているこの作品を、村上は「自伝的小説」と位置づけています。

全部で40章から構成されているこの小説は、「ハードボイルド・ワンダーランド」の章と「世界の終り」の章が交互に展開していく形で物語が進んでいきます。最初はその形式に戸惑うかもしれませんが、徐々に2つの物語が触れ合っていくのに気が付くとドキッとします。村上作品独特の言い回しなどもたっぷり楽しめるファンタジーです。

みんなのレビュー

初読時は(一応の)現実世界と思われる「ハードボイルド・ワンダーランド」パートを面白く読んだ記憶があるが、今回は静謐な幻想世界が繰り広げられる「世界の終り」パートの方に面白さを感じた。今のところ初読時よりも気分良く面白く読みすすめることができており、下巻も楽しみ。

引用元:読書メーター

ネクロポリス

読んでみて

恩田陸の『ネクロポリス』はミステリーとしてもファンタジーとしても楽しめる長編小説です。独特な世界観なので好みは分かれるかもしれないのですが、1度読んでみて損はありません。普段ミステリーをたくさん読んでいる人にもおすすめできるファンタジーです。

舞台はイギリスと日本の文化が融合した世界「V.ファー」の「アナザーヒル」。そこを生きている者が訪れると、なんと死者と交流することができます。文化人類学を専攻する学生・ジュンは「V.ファー」で起こった連続殺人事件の被害者に話を聞くため、アナザーヒルを訪れるのですが…ファンタジーの世界で起こる事件は一見「何でもありなのでは?」と思うのですが、この作品はミステリーとしても筋が通っていて、さらに重厚な世界観がありのめりこむように読んでしまいます。

みんなのレビュー

塩の街

読んでみて

有川ひろ(有川浩)の『塩の街』も独特な世界観が光るファンタジーです。ディストピアものといってもいいかもしれません。先ほどの『ネクロポリス』はミステリーとしても楽しめるとご紹介しましたが、こちらの『塩の街』は恋愛小説としても満足できる作品です。

世界中のさまざまなものを「塩」が飲み込んでいく塩害に侵された世界の片隅、崩壊寸前の東京で生きる男・秋庭と少女・真奈。彼らの前にはさまざまな人が現れ、そして塩となって消えていくのですが、あるとき1人の男が「世界とか、救ってみたくない?」と秋庭をそそのかします。

想像がつかないほどの塩害をどう脱するのか、そして2人のこれからは、など気になる要素が盛り沢山でエンターテイメント性抜群の小説です。

みんなのレビュー

影との戦い―ゲド戦記〈1〉

読んでみて

ここからは海外のファンタジーを2冊ご紹介します。アーシュラ・K・ル・グウィンの『ゲド戦記』はスタジオジブリが制作したアニメ映画を観たという人も多いでしょう。映画は全6巻ある『ゲド戦記』シリーズのうち第3巻をアニメ化したものなので、このシリーズの第1巻『影との戦い』を読むと戸惑われるかと思います。

舞台は太古から伝わる言葉が魔力を発揮する「アースシー」という島々。スタジオジブリの映画では主人公が王子・アレンでしたが、『影との戦い』は正真正銘ゲドが主人公です。

才能に満ちた少年・ゲドは、あるとき学校の掟を破って術を使い、死者の霊と一緒に自らを脅かす「影」も呼び出してしまいます…最初は入り込みにくいかもしれませんが、読み進めるうちに細部まで描かれた世界の在り方に思わずのめりこんでいる自分に気がつくはずです。

みんなのレビュー

己を見つめ直す話。感情、行動、仲間と己、自己と他者を認識する成長過程がハイファンタジーの中で読み取れるのが面白いです。それにしても、多島海世界という舞台になかなか理解が追いつかず苦戦。海は舟の上以外に逃げ場がないといあたり、冒険の象徴のようにも感じる。この世界ならではの険しさを味わうにはもっと読み込みたいなと思いました。

引用元:読書メーター

魔女と暮らせば―大魔法使いクレストマンシー

読んでみて

ダイアナ・ウィン・ジョーンズはイギリスで「ファンタジーの女王」と名高い児童文学作家です。スタジオジブリ映画『ハウルの動く城』の原作『魔法使いハウルと火の悪魔』の作者といえば思い出してもらえるのでないでしょうか。ここでご紹介する『魔女と暮らせば』は彼女の代表作『大魔法使いクレストマンシー』シリーズの第1作目です。

このシリーズでは世界はいくつもの平行世界に分かれて存在していて、それぞれの世界で起こる魔法が関係したもめ事を解決する「クレストマンシー」という役職がキーになってきます。

『魔女と暮らせば』ではそのクレストマンシーの城に住むことになった姉弟・グウェンドリンとキャットの2人が主人公です。こちらも最初は飛びぬけた世界観に戸惑うかと思うのですが、次々に起こる事件や繰り出される魔法に夢中になってしまいます。

みんなのレビュー

原点だなぁ。という感じ。強烈なキャラクター、愉快な魔法、そして切なさや寂しさ。この雰囲気がジョーンズ作品だなぁという感じでとても好き。

引用元:読書メーター

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