15年間人間を憎み続けた巨大象が、初めて人間を信じた瞬間に起きた奇跡

衝撃の現実

出典:Midjourney

象舎への案内の途中、マイクさんの足取りが急に重くなりました。
「エミリー、実は象舎には少し…特殊な事情があるんだ」
象舎に近づくと、まず目に飛び込んできたのは、立派な屋外展示場でした。広々とした敷地に人工の池、そして大きな日陰を作る人工岩。設備は申し分ありません。
でも、そこにいたのは、私が想像していた象とは全く違う姿でした。
檻の最も奥の角で、まるで自分を隠すようにうずくまるダンボ。私たちの足音を聞くと、明らかに身体を硬直させ、小さな目でちらりとこちらを窺います。そして次の瞬間、さらに奥へと後退していきました。
「どうして…?」
私の声は震えていました。ナショナル・ジオグラフィックで見た象たちは、もっと堂々として、好奇心旺盛で、人懐っこい存在のはずでした。
「彼はサーカス出身なんです」
マイクさんの声が、急に低くなりました。
「詳しいことは分からないけれど、ひどい扱いを受けてきたらしい。動物愛護団体に保護されてここに来たのが15年前。でも、未だに人間を見ると…」
ダンボが私たちから最も遠い場所で、背中を向けて座り込む姿を見て、私の心は張り裂けそうになりました。

過去の傷跡

出典:Midjourney

その日の夕方、マイクさんがダンボの過去について詳しく教えてくれました。
「彼がここに来た時の状態は、本当にひどかった」
マイクさんの目が遠くを見つめます。
「体重は今より1トンも軽くて、鼻にはむちで叩かれた古い傷跡があった。足の甲には鎖で縛られた跡もね。でも一番深刻だったのは、人間を見た時の反応だった」
ダンボは最初の数年間、制服を着た人間が近づくだけで、パニック状態になったそうです。鼻を激しく振り回し、時には自分の頭を檻にぶつけてしまうことも。
「何度も諦めかけたよ」マイクさんがつぶやきました。「でも、諦めたら彼の人生は終わりだと思ったんだ。だから、距離を保ちながらでも、毎日世話を続けてきた」
15年間、ダンボは基本的な世話は受け入れるものの、人間との心の交流は一切拒み続けてきました。手から餌を食べることはおろか、5メートル以内に人間が近づくことも許さない日々が続いていたのです。

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